当選から一夜明け、知事公舎前で報道陣の取材に応じる玉城デニー氏=2022年9月12日、那覇市(c)朝日新聞社
当選から一夜明け、知事公舎前で報道陣の取材に応じる玉城デニー氏=2022年9月12日、那覇市(c)朝日新聞社

 9月11日の沖縄県知事選で、自公推薦候補らを破り再選を果たした玉城デニー氏。米軍基地問題については、「沖縄の未来を描いていくため、基地問題の解決を図っていく。私はこれまでもこれからも1ミリもぶれない」と改めて主張した。

「差別的」とされる、沖縄の米軍基地問題を語るうえで欠かさないものに、米軍に法的な特権を認めた日米地位協定がある。玉城氏が繰り返し「見直し」を求める日米地位協定とは。著書『新時代沖縄の挑戦 誰一人取り残さない未来へ』から、一部を抜粋・改編してお届けする。

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 日米地位協定は、日本に駐留する米軍による施設や区域の使用を認めた日米安全保障条約(日米安保条約)第6条を受け、施設・区域の使用のあり方、日本における米軍の地位について決めたものです。

 具体的には、施設・区域の提供、米軍の管理権、日本国の租税などの適用除外、刑事裁判権、民事裁判権、日米両国の経費負担、日米合同委員会の設置などが定められています。ドイツやイタリアでは、事故をきっかけに改定や大幅規制が実現していますが、日本では協定締結から60年以上が経つものの、運用の改善はあっても本文の改定は一度もありません。

 新型コロナウイルスの検疫でも、この日米地位協定の問題が浮き彫りとなりました。外国人が日本に入国する際は、基本的に検疫を受けなければなりません。しかし日米地位協定の下、日本の検疫法は米軍に適用されません。

 2021年12月初旬、渡航前PCR検査を受けずに沖縄の米軍基地に来た部隊から、感染が広がりました。この第6波のオミクロン株は感染力が強く、米軍基地からの「染み出し」で県内に感染が広がりました。米軍岩国基地がある山口県や近隣の広島県でも、同様の状況がありました。

 入国後24時間以内の検査実施が決定したのは年末です。米軍の感染防止対策は非常に展開が遅く、対策が徹底されるまでの間に、感染の「種」が市中にばらまかれてしまいました。米軍に強く抗議するとともに、年明け1月2日の緊急記者会見で「日米両政府においては、この問題を単に米軍の感染症対策の不備として矮小化するのではなく、米軍に地位的な特権を与え、また十分な感染予防対策に関する情報提供も、共有もままならないなどの状況をつくり出している日米地位協定がもたらす構造的な問題であるという、強い危機意識を持っていただきたい」と強調しました。

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