神真都Qの集会(c)朝日新聞社
神真都Qの集会(c)朝日新聞社

 米国の5、6人に1人がその主張の柱を信じているとされている陰謀論集団「Qアノン」。昨今は日本でも信奉者が急増している。その裏側には、匿名性の高い「ブログ」の存在があると専門家は指摘する。朝日新聞国際報道部記者で、『Qを追う 陰謀論集団の正体』の著者でもある藤原学思氏が、陰謀論が広がる土壌ができつつある日本社会のバックグランドを探り、処方箋を提示する。

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■「Qアノン」信奉者の投稿が「アメブロ」教育ジャンルで1位に

 著名人が多数利用する「アメーバブログ」のページに飛ぶ。検索窓に「Qアノン」と打ち込む。いくつものページがヒットする。

 たとえば、9月1日にとある女性がした投稿。前米大統領のトランプのネット上での動きを紹介し、「水面下での軍事作戦が、本物だということを証明してくれた!!」と興奮した様子で書き込まれている。

 トランプは8月末、自身の立ち上げたSNSで、「Q」の過去の投稿や関連の主張を、400万人のフォロワーに向けて拡散していた。これは米国の主要メディアですぐにニュースになった。アメブロの投稿は、それを受けてのものだろう。女性は「新世界が近づいて」いると、喜びに満ちた書き込みをしている。そしてこの投稿は、アメブロ内の「教育ジャンル」で1位になっていた。

 Q――。 2017年10月、英語圏の匿名掲示板に突然現れた謎の人物だ。20年12月まで5千件近く投稿を続け、「世界は小児性愛者に牛耳られている」「米民主党のエリートや主要メディアの幹部がそこに所属していて、彼らはいずれ逮捕される」「トランプが影の救世主として我々を救ってくれる」といった荒唐無稽な主張が生まれ、広がるきっかけをつくった。

そうした陰謀論、あるいはそれを信じる集団が「Qアノン」と呼ばれる。

■日本でも浸透するQアノン 記者に攻撃的なコメントも

 私は米国を拠点にQアノンについて調べる過程で、「日本のQアノンコミュニティーの拡大には、ブログが大きな役割を果たした」と専門家から聞いた。ツイッターやフェイスブックはQアノン関連の投稿に規制をかけているが、アメブロは野放しのように見える。

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日本にも浸透したQアノンとは何か