皮膚に症状が出ているからといって皮膚の病気だとは限りません。内臓の病気が原因で皮膚に症状が出ていることがあります。近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師が、皮膚に症状がありながら、内臓の病気に気をつけたほうがよい疾患について解説します。

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 皮膚は内臓を映し出す鏡という言葉があります。皮膚科に受診する患者さんの中には、皮膚に症状が出ているものの、病気の原因が内臓の場合があります。このような皮膚疾患を専門用語で「デルマドローム」というのですが、本日は皮膚に症状がありながら、内臓の病気に気をつけたほうがよい疾患三つを紹介します。

■皮膚筋炎

 ヘリオトロープという花をご存じでしょうか?紫色の花を咲かせる香りの良いハーブの一種です。この花のような皮疹が両まぶたに出現し、紫外線に負けたような発疹が出現すると皮膚筋炎という病気が疑われます。皮膚筋炎に特徴的な所見として、先ほど説明したヘリオトロープに似た発疹や手の甲の関節にカサカサをともなう発疹が出現するゴットロンサインなどがあげられます。かゆみがとても強く、かいた後が線となってずっと残るような状態が続きます。

 皮膚筋炎は内臓の病気を合併することがあり、特に気をつけたいのがさまざまながんです。私の経験でも、皮膚筋炎から早期の肺がんを見つけた患者さんが何人もいます。皮膚筋炎はほかにも、間質性肺炎といった命に関わる疾患が合併することもあるので注意が必要です。

■IgA血管炎

 足のスネの部分にたくさんの小さな内出血が出現した場合、IgA血管炎という病気の可能性があります。IgA血管炎は腎臓の病気を合併することが多く、子どもに出やすい病気の一つです。扁桃腺(へんとうせん)が腫れるような風邪をひいた後に起きやすいIgA血管炎ですが、関節が痛くなったり、腹痛があったりするのが特徴です。足の小さな内出血を精査することでIgA血管炎の診断がつきます。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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