80年代には霊感商法が大々的に報じられた(写真は朝日ジャーナル1987年1月30日号)
80年代には霊感商法が大々的に報じられた(写真は朝日ジャーナル1987年1月30日号)

 夜はワンボックスカーの中で8人が折り重なるように寝た。

「みんな互い違いになって、体を斜めにして寝返りもできない状態で寝るので『ギョウザ寝』と呼んでいました。寝る際は、壁際の一番寝やすい場所を狙うんです。でも、そこにたどり着けなくても、力尽きるように寝てしまう。毎日戸別訪問で走り回って、ヘトヘトに疲れて帰ってきますから。睡眠時間は3、4時間しかありませんでした」

挨拶まわりに来る議員

 3つ目は政治家に対する支援活動である。

ただ、竹迫さんは選挙運動に動員されたことはないという。それは当時、未成年者だったためで、「投票権があれば、ぼくも動員されたと思います」。

 旧統一教会のイベントに政治家が参加するのはごくふつうのことだった。

「例えば、クリスマス会を開くと、地元の議員が来て挨拶をするんです。そのとき、周囲から『原理(教団の教義)を聞きに来る議員さんだよ』と、教えてもらった」

 このようなイベントを通して議員と相性のよい信者や実務能力の高い信者が選挙事務所に入っていく、と竹迫さんには見えた。ただ、旧統一教会が声をかけるのか、それとも議員の方から声をかけるのかはわからないという。

 さらに、ときどき政治家秘書を養成するためのセミナーが開かれ、女性だけの特殊部隊がつくられた。

「セミナーに参加できるのは身長何センチ以上とか、基準が決まっていて、英会話を徹底的に叩き込むような合宿が行われた。そして、無料で秘書をつけますと、各議員に女性信者が派遣されていった」

 これは有名な話で、当時をよく知る関係者の間では常識という。

 記事の後編では、竹迫さんの実体験から「入会」と「脱会」について語っている。

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

※記事後編<<「東京六大学より下の学生は勧誘行って」 旧統一教会の元信者で現役牧師が明かす入会と脱会の“異常性”>>に続く