ちなみに、竹迫さんは脱会直前まで「経済部隊」に配属され、北海道で活動していた。
「ハンカチ売り部隊の一員として北海道に行けと上司から言われたときは不安しかなかったですね」と振り返る。
かつて合宿で珍味売りをさせられたとき「1日やっても1円も売れなかった」苦い経験がある。そんな思いもあり、経済部隊に従事することは不本意だった。しかし、竹迫さんは「わかりました」と即答した。
「旧統一教会では『上司の意向は神の意志だ』という教育が徹底していました。心の中で反発を覚えること自体が罪でした。なので、内心ムッとしたり、おかしいなと思っても、その気持ちを打ち消してしまう。すぐになかったことにしてしまうので疑問が長続きしない」
ハンカチ売りと「ギョウザ寝」
北海道では2台のワンボックスカーに15人が分乗して、毎日移動しながらハンカチを売り歩いた。
「毎朝『ここがわれわれのいる場所。これが君の任地』と言われ、地図のコピーを手渡された。どこの町にいたかは、まったく思い出せません」
3枚1組3000円のハンカチを手に、「恵まれない子どもたちを支援するためのボランティア活動です。ハンカチを販売しています」と家々を訪ねた。しかしそれは、うそだった。
「収益の一部は支援団体に寄付するんですが、そういう実績というか、証拠をつくって詐欺を重ねた」
偽募金による経済活動は悪いことかもしれない。しかし、「世界を救う」という旧統一教会の大きな目的のためには小さな犠牲はやむを得ないと、自分を納得させていた。
「毎朝、売上目標を立てさせられるんです。昨日は頑張って2万円売ったから、今日は4万円とか言うと、『そんなに安い金で世界が救えるか』って、隊長からハッパをかけられた。だから絶対に達成できないとわかっていても10万円とか20万円とか、過剰な目標を立ててしまう。なので、どれだけ自己ベストを更新しても、今日もだめだった、という感覚しか残らなかった」