収入が上がっても転職先とのミスマッチに悩むビジネスパーソンは少なくない。写真はイメージ(PIXTA)
収入が上がっても転職先とのミスマッチに悩むビジネスパーソンは少なくない。写真はイメージ(PIXTA)

2022年4~6月における月平均転職者の数は314万人となり、昨年同月比で30万人も増加した(総務省調査)。しかし、意外と知られていないのが、転職後の離職率の高さだ。21年の厚生労働省の調査によると、転職者の21%が「更なる再転職をしたい」と回答し、「(このまま働き続けるか)わからない」を合わせると、約半数(46%)が転職先とのミスマッチに悩んでいる。元大手人材紹介会社部長で、長年にわたり転職先での活躍支援に携わっている川野智己氏が、実際にあった転職のミスマッチ事例と対処法を紹介する。

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■期待された転職だったがはずが…

 花田一郎さん(44歳=仮名=)は、中堅の人事コンサルティング団体のシニアコンサルタントとして勤務していたものの、年齢を重ねるとともに社内に自分の居場所がなくなりつつあると悩んでいた。

 クライアント企業でオーナーの高齢化による代替わりが進み、「先代のお抱えのコンサルは不要」と受注を失ったことで営業成績が低迷していたのだ。「ほんの数年前までは高い業績を上げ社内でも評価されていたはずだ。もはや、過去の功績など誰も顧みてくれない」と、社内での冷淡な扱いに寂しさを感じていた。

 そんな中、クライアントである大手化学品会社の鈴木部長からこんな誘いを受けた。

「花田君、ぜひ転職して私の右腕になってくれ。一緒に社内改革をやろう」

 当時、鈴木部長は子会社の販社に社長として転出することが決まっており、子会社の組織改革を託されていた。そこで、ブレーンとして人事に精通した人材を探していたところ、花田さんに白羽の矢が立った。鈴木部長はこう続けた。

「実は、私が社長として就任する販社は、野放図で無秩序な状態なんだ。君のその理論的な切り口で、人事、労務制度を整備して、愚かな社員連中を厳しく指導してくれ」

 自分にここまで期待してくれるなら――久々に仕事へのモチベーションが高まった花田さんは鈴木部長の言葉を信じて、転職を決意。条件面も悪くなく、年収も約150万円アップすることになった。

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強引に進められた「社内改革」