稲盛和夫氏
稲盛和夫氏

 京セラとKDDIの創業者、稲盛和夫(いなもり・かずお)氏が8月24日、老衰のため京都市内の自宅で亡くなりました。90歳でした。倒産した日本航空(JAL)を再上場させるなど“経営の神様”として知られた稲盛氏が、自身の経営哲学などについて語った週刊朝日のインタビュー連載「これが私の生きてきた道」から一部を抜粋して紹介します。

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 KDDIの設立や倒産した日本航空再建に手腕を振るってきた稲盛和夫氏。仕事でより良い成果を上げる秘訣を明かした。

――稲盛会長は京セラ、KDDI、JALなどで多くの部下をお持ちですが、どういう人が仕事で良い成果を上げるとお考えですか?

 私が考えた人生・仕事の方程式というものがあります。人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力、というものです。大事なのは、その人が持つ、人生や仕事に対する「考え方」と「熱意」であり、「能力」は3番目と考えています。

――「能力」が3番目とは?

 ここで言う「能力」とは、知能、学力や運動神経などです。多分に先天的なものがあり、個人の意志が及ぶものではありません。能力を点数で表せば、「0 点」から「100点」まであります。

――次に「考え方」とは?

 例えば、世を拗(す)ね、人を恨み、斜に構えたものの見方をする人の「考え方」はマイナスになります。一方、壁にぶつかっても素直に人の意見を吸収し、苦労も厭わず、仲間や他人に善かれと願い、明るく真面目に努力し続ける人の「考え方」はプラスになっていく。つまり、「考え方」次第でその人の人生は大きく変わっていくと思うのです。だから「考え方」には、「マイナス100点」から「プラス100点」まであるのです。

――「熱意」とは?

「熱意」は「努力」と言い換えることができます。これも全くやる気のない「0点」から、仕事に対し、燃えるような情熱を抱き、懸命に努力する「100点」まであります。

――「考え方」が一番重要なのですか?

 はい。例えば、ベンチャー経営者、社長になるような人は大抵、人並み外れた能力、仕事への熱意を持っています。立身出世する人の多くは、アグレッシブで同時にエゴも人一倍強い。エゴの最たるものは物欲、名誉欲、色欲ですが、それらを制御せず、「俺が俺が」「もっと儲けたい」などとエゴを肥大化させると、人心が離れたり、儲け話に引っかかったりとつまずいていく。人はエゴで成功もしますが、破滅もするのです。

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必要な時は本気で叱る