元暴力団組員で牧師の進藤龍也さん(本人提供)
元暴力団組員で牧師の進藤龍也さん(本人提供)

 ある日曜日の午後、埼玉県川口市にある「罪人の友 主イエス・キリスト教会」を訪れると、牧師が日曜礼拝に集まった人たちに語りかけていた。この教会の牧師・進藤龍也さんは今も全身に入れ墨が残る元暴力団組員だ。刑務所で聖書と出会い33歳で洗礼を受け、現在は「やり直しをしたい人が神様と出会える場」として、教会にやってくる現役や元組員の話を聞いたり、仕事先を紹介したりもしている。

 進藤さんは「口座開設支援の話は知らなかった」というが、自身の思いは先の弁護士たちと一致点がある。

「組をやめても行き場がないとどうなるか。食べていくために半グレになるだけですよ。社会復帰を進めないと、そうした人間が増えて世の中がどんどん悪くなると思います。そもそも暴対法や条例で締め付けて暴力団を弱体化させることと、組をやめた後をどうするかはセットであるべきだったと思います」

 一方で、元組員に仕事先を紹介したのに、すぐにやめてしまったなど、うまく行かないケースもある。また、警察や暴追センターなどに頼りたくないという、プライドを捨てられない組員が多いであろうことも、進藤さんは認める。

「こんな仕事面白くない、恥ずかしいという思いがあっても、そこからはい上がっていく。人生をやり直すとは、そういうことですよね。組に長くいると、社会に出てもわからないことばかりなので、誰かが教える必要がある。僕のような人間が刑務所に出向いて、やり直すとは何かを伝える機会が増えることを望んでいます。そのうえで特に若い元組員は、体を使ってしっかり働いて納税者になってほしい。落ちたら戻れない社会ではなく、彼らにその道がある社会であってほしいと願います」

 教会を訪れていた中に、小指のない高齢男性がいた。訪れていた5歳くらいの女の子やその家族と、笑顔で話している。話を聞くと、70代の元暴力団幹部。人生の半分以上を刑務所で過ごし、数年前に組を離脱したそうだ。

 この男性も、口座開設支援の話は知らなかった。

「いまは暴力団にいても食えないから、若い組員たちには(支援の話を)教えてあげてほしい。けど、俺たちを受け入れてくれるのか……だめでしょう? 職場で物がなくなったりしたら、まず疑われるのは俺たちじゃないのかな。カタギでやっていきたいって気持ちを認めてくれたらいいんだけどね」

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暴力団の生き方は「おもしろくもなんともなかった」