※写真はイメージ(gettyimages)
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 居酒屋をめぐって47都道府県を踏破した太田和彦氏が、居酒屋を通して県民性やその土地の魅力にせまった『居酒屋と県民性』(朝日文庫)から、愛知の居酒屋と県民性について、一部抜粋・再編してお届けする。太田さん推薦の居酒屋も必見だ。

【写真】『居酒屋と県民性』はこちら

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【愛知】居酒屋のない町に日本一の居酒屋が

 関東と関西を分かつのは愛知県豊橋あたりで、ここを境に味の好みが変わる。

 麺類(関東は蕎麦/関西はうどん)、出汁(関東は鰹節/関西は昆布)、基本調味料(関東はなんでも?油/関西は薄口?油と酢)、味噌(関東はしょっぱい赤味噌/関西は甘い白味噌)、香辛料(関東は七色唐辛子/関西は山椒)、葱(関東は白いところ/関西は青いところを使う)、鰻(関東は蒸して焼く/関西は直焼き)、寿司(関東はにぎりで主役はまぐろと小肌/関西は押し寿司で主役は鯖寿司)、天ぷら(関東は専門店が多く天丼は豪華/関西は天ぷら店が少なく天丼は貧弱)。

 居酒屋的には、刺身の好み(関東はかつお、まぐろなど赤身/関西は鯛、ぐじなど白身)、〆鯖(関東は酢洗い程度のあっさり/関西は酢をたっぷりきかせてさらに出汁に浸す「きずし」)、卵焼(関東は砂糖を入れてやや焦がす程度まで「焼く」/関西は出汁たっぷりで温め固めるだけの出汁巻で「焼かない」)、煮魚(関東は?油の濃い汁でさっと煮る/関西は出汁をきかせあっさりゆっくり煮る)、おでん(関東は煮ないで静かに温めているだけ、大切な種ははんぺん/関西はつねにグラグラ煮えたぎりどんどん出汁を追加する、大切な種は牛スジ)。やや無理して言えば日本酒(関東は辛口/関西は甘口)、などなど。

 中間の大都市名古屋はどうか。

 麺類(平たいひもかわうどんの「きしめん」、その「味噌煮込みうどん」)、鰻(直焼きをご飯に埋める「ひつまぶし」、最後はお茶をかける)、味噌(独自の八丁味噌、これはうまい)、寿司(よりも天ぷらのおにぎり「天むす」)、おでん(よりも「どて焼き」)などなど独自色が強い、というか独自色を作り出したのは、東西に埋もれない意地か。

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