海外に駐在する外交官や企業のビジネスマンは、さまざまな事態に対応するために現地で人脈を築き、情報を収集するのも大事な仕事です。相手の宗教や趣味、嗜好を把握した上で接待や交渉に望むのは当然です。特に宗教は絶対に把握しなければ、相手を怒らせてしまう。

 たとえば、イスラム教徒の方を接待する場合は、食事で豚肉とお酒は出せません。ヒンドゥー教徒は、牛肉・豚肉をはじめ肉食全般を避ける傾向があります。食材でタブーがある場合、その肉を切った包丁さえ、相手に出す調理には使えないのです。

 では、どのようにして相手の宗教を把握するのか。

 初対面の相手と顔を合わせて唐突に、「あなたの宗教は何でしょうか」と質問するのは、さすがに不躾(ぶしつけ)です。しかし2回、3回と顔を合わせて気心の知れた仲になれば自然と、「昨日は教会に通った」「(宗派の)お祈りをしなければならない」といった話題が日常生活のひとコマとして登場します。どの宗教であっても、信仰心の篤い地域の人たちは、生活の中に宗教が溶け込んでいるからです。

語学とは異文化の学び

 外国語の学びは、異文化コミュニケーションの学びでもあると私は思います。初学者であれば、暗記した単語を並べて会話に挑戦するのもいい。しかし、相手の文化を学び、理解しようとしなければ、信頼は得られません。

 単語から相手の文化につながる情報を得られることも少なくありません。

 異文化を理解するという観点からぜひ、語学を学んでみてください。新たな景色を知る面白さがありますよ。

(構成/AERA dot.編集部・永井貴子)