あわせて高齢者に注意が必要なのが、乳房外パジェット病という皮膚がんです。これは外陰部やわきの下にできる皮膚がんで、いんきんたむし(陰部の水虫)と誤診されやすいがんです。いんきんたむしだと思って水虫の薬を塗り続けていたが治らず、赤かった皮膚病変が次第にジュクジュクしはじめたとなれば、乳房外パジェット病の可能性があります。陰部に赤みだけでなく、色が白く抜ける部分があったり、腫瘍が出てくるとこの病気をかなり疑います。何カ月も治らない陰部の湿疹はもしかしたら、がんかもしれません。

 皮膚がんは基本的に自分で気がつけるため、早期発見が可能です。しかし、今回紹介した皮膚がんはどれも痛くありません。痛くないためについつい放置し進行してしまうケースがあります。その他注意すべき点は、足の裏や背中など普段見ることがないような部位にできた場合や、皮膚がんと思わずに放置してしまう場合です。皮膚がんは早期発見すれば手術で完治可能ながんです。ぜひ定期的なセルフチェックをしてください。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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