記者会見した泉房穂市長。「安倍元首相の事件後なので感じ方が違う。率直に怖い」と述べた
記者会見した泉房穂市長。「安倍元首相の事件後なので感じ方が違う。率直に怖い」と述べた

 安倍晋三元首相の銃撃事件から1カ月も経たない7月下旬、自治体首長を名指しした殺害予告メールが相次いで送られていた。兵庫県明石市の泉房穂市長と、名古屋市の河村たかし市長。警察が捜査しているが、容疑者の特定には至っていない。脅迫メールはいずれも辞職を強要する内容で、明石市長は公務に支障をきたす日々が続いている。

【写真】自作の銃を手に持つ山上徹也容疑者

「そら、ビビりますよ。あんな信じられない事件の後ですから」

 と沈痛な表情で語るのは泉市長。7月26日、兵庫県の明石市とは別の自治体に、

<こいつが市長をやっていると兵庫の恥だ。さっさと辞職しないと、こちらも強硬手段に出る>

<山上徹也を参考にして自作銃も作った>

<何発も撃って殺す>

 などと書かれたメールが送られてきたのだ。

 自治体が兵庫県警に通報し、泉市長が脅迫メールの存在を知ったのは26日夜のこと。

 安倍元首相が奈良市で山上徹也容疑者に自作の銃で撃たれたのは7月8日。

「安倍さんの事件が頭に浮かびました。選挙でマイクを握って訴えている最中に、やられてしまったあのシーン。脅迫メールにも山上容疑者の名前があり、『自作銃』ともあるのでゾッとします」(泉市長)

 泉市長にはもう一つ、忘れられない事件がある。

 泉市長は政治家になる前は、石井紘基元衆院議員の秘書だった。国会での与党への追及で知られた石井氏だが、2002年10月25日朝、東京都内の自宅前で、男に刃物で刺されて亡くなった。

「安倍さんと同時に、恩師の石井先生のことがよぎりました。今年でその事件から、ちょうど20年になりますから。朝、自宅を出るといきなり刺されてこの世を去ってしまった。私も朝、市役所に向かおうと自宅を出る時、思わず足がすくむような気持ちになります」(同)

 石井氏の長女、ターニャさんも、

「安倍元首相のことがあって、父の秘書でもあった泉市長に脅迫メールとニュースで知りました。本当に心配でなりません」

 と話した。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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好きな明石焼きも食べに行くことができない