※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 かつては拒食症と呼ばれていた「神経性やせ症」やいったんのみ込んだ大量の食べ物を意図的に吐き出す「神経性過食症」などは、「摂食障害」と呼ばれる精神疾患の1つです。

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 うつ病、統合失調症、不安症といった精神疾患を持つ人の半数は10代半ばまでに発症しており、全体の約75%が20代半ばまでに発症しています。精神科医で東京都立松沢病院院長の水野雅文医師が執筆した書籍『心の病気にかかる子どもたち』(朝日新聞出版)から、「摂食障害」について一部抜粋してお届けします。前編に続いて、後編です。

【前編はこちら→】食べては吐くを繰り返す「神経性過食症」や拒食症 ダイエットが発症のきっかけに【チェックシート】

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【治療】

 摂食障害は、単に体重や食事、栄養だけの問題ではありません。体だけでなく心のケアも含めた治療を行います。治療の第一歩は、心と体がどのような状態なのか判断することです。通常は問診で、どのような症状が、いつから現れ、どのように変化してきたのかなど、経過を聞き取り、発症のきっかけは何か、体重の変化があるのか、やせたい気持ちや自分の体重や体形についての考え方などを確認していきます。幼少期の話や日常生活の様子などが参考になることもあります。

東京都立松沢病院院長の水野雅文医師
東京都立松沢病院院長の水野雅文医師

 体については、診察のほか、血液検査をはじめとする検査を行います。

 治療の柱となるのは、栄養療法と心理教育、精神療法です。それぞれの患者さんの症状や、症状の重さ、別の病気の有無や、背景の問題などに応じて治療を選択していきます。

 栄養療法の目的は、栄養状態を改善して、適正な体重に戻すこと。栄養士による食事のアドバイスや、必要に応じて補助的な栄養補給なども行われます。

 心理教育では病気について正しい知識を学び、摂食障害患者特有の考え方や食行動の習慣に働きかけて、拒食や過食という手段に頼らなくても心地よく過ごせるような考え方を身につけます。

 精神療法には専門家によるカウンセリングが中心ですが、より専門的な精神療法として摂食障害に特化した認知行動療法が行われることもあります。

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危険な状態なら入院で治療することも