秀島史香さん(写真:著者提供)
秀島史香さん(写真:著者提供)

 なぜラジオは3時間の生放送でも聞き続けられるのか? ラジオDJとして25年、第一線で活躍し続ける秀島史香さんですが、実は「もともと緊張しがちで人見知りで心配性」といいます。そんな秀島さんだからこそ見つけられた、誰でも再現できる「人が聞き入ってしまう会話のレシピ」を一冊に詰め込んだ『なぜか聴きたくなる人の話し方』からの連載。今回は、会話の中で相手の口からこぼれおちる「その人らしい言葉」をキャッチするコツをご紹介します。

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■ガンジーと蛭子能収さん

 以前、漫画家でタレントの蛭子能収さんへのインタビューで「人生のモットー」についておうかがいしたときのこと。

 そのお答えは、穏やかにズバリ一言「死なないこと、ですね」。

「え? なんだか哲学的。どういうことですか?」とさらに詳しく聞いてみると「死んだら自分の存在そのものがなくなってしまうでしょ。なので、とにかく争い事はしないんです。謝って済むことなら、すぐ謝るんです」と。

 その言葉を聞いて、愛妻家でもいらっしゃる蛭子さんに、「ご家族の間でも、ですか?」と一歩踏み込んで聞いてみました。するとニコニコしながら「ふふふ、女房からはバーッといろいろ怒られますけど、自分からそれを言い返すことはしません。ああ、すまんすまん、って謝っておきます。謝って済むなら謝っておけって感じなんですよ」と。

 なるほど、夫婦円満の秘訣にはこんな考えもあるんだなぁとすっかり感心してしまい、半ばつぶやきのように「ガンジーのようなお方ですねえ」と口にした瞬間、即座に蛭子さんが人差し指を立てながら「そう、そうなんですよ! オレ、ガンジー、すごく好きなんですよ!」と、この日一番の笑顔。

 さらにすぐさま「無抵抗。戦わないところが大好きなんです!」と熱く言葉を続けられました。「ほほー深い!!」と観覧のお客さまと大きくうなずいたら、やはり漫画家の性がうずいたのか、「ま、それが長生きの秘訣です!」ときっちりオチをつけてくれてスタジオ全体で大爆笑。その場が一気に「うふ」という柔らかい空気に包まれました。

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秀島史香

秀島史香

秀島史香(ひでしま・ふみか)ラジオDJ、ナレーター。1975年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。慶應義塾大学在学中にラジオDJデビュー。映画、テレビ、CM、美術館音声ガイドなど多岐にわたり活動している。現在FMヨコハマ『SHONAN by the Sea』、NHKラジオ『ニュースで学ぶ「現代英語」』、NHK Eテレ『高校講座 現代の国語』などに出演中。著書に『いい空気を一瞬でつくる 誰とでも会話がはずむ42の法則』『なぜか聴きたくなる人の話し方』(共に朝日新聞出版)。ハスキーで都会的な声質、あたたかい人柄とフリートークが、クリエイターからリスナーまで幅広く人気。

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「すかさず!」ぐらいがちょうどいい