巨人・菅野智之
巨人・菅野智之

 昨年3位からの巻き返しを図ったシーズンだったものの、首位ヤクルトには大きく引き離され、2年ぶりのリーグ優勝はかなり厳しい状況となっている巨人(8月7日終了時点で首位から11.5ゲーム差の4位)。一時は二桁以上あった貯金もなくなり、クライマックスシリーズ進出にも黄色信号がともっている。シーズン前にここまで苦戦することを予想していたファンも少なかったのではないだろうか。

【写真】イチローが「本当の天才」と言った男とは

 大きな原因となっているのが投手陣だ。チーム防御率は先発、リリーフともに12球団でワーストの数字となっており、7月には4試合連続で満塁ホームランを浴びるという屈辱も味わっている。先発では長年エースとして君臨してきた菅野智之に絶対的な力がなくなっており、リリーフも中川皓太が怪我の影響で一軍での登板がなく、ビエイラ、デラロサ、鍵谷陽平などが揃って低迷している。リーグトップのチーム防御率を誇る阪神と比べてみると与四球の数が100個以上多く、奪三振率もリーグで唯一6点台と最低の数字となっている。力で圧倒することができる投手が少ないことをよく物語っていると言えそうだ。

 しかし、今シーズンに限って言えば苦しい投手陣だが、明るい材料があることも確かだ。先発では高卒4年目の戸郷翔征が早くもキャリアハイと並ぶ9勝をマーク。防御率も2点台と、昨年と比べても投球内容が安定していることは間違いない。またリリーフではルーキーの大勢がクローザーに定着し、タイトル争いをするほどの活躍を見せている。他にも堀田賢慎、平内龍太、山崎伊織、赤星優志などここ数年で獲得した投手が軒並み一軍で通用する投球も見せており、世代交代の機運は確実に高まっているのだ。外国人選手もメルセデス、ビエイラの2人はまだ20代と若さがあるだけにここから巻き返すことも十分に期待できる。菅野のような圧倒的な存在になれる投手が出てくるかは未知数だが、来年以降は成績が向上する可能性は高いだろう。

著者プロフィールを見る
西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

西尾典文の記事一覧はこちら
次のページ
気になる“未来の中軸候補”不足