霞柱・時透無一郎(画像はアニメ「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編公式HPより)
霞柱・時透無一郎(画像はアニメ「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編公式HPより)

【※ネタバレ注意】以下の内容には、今後放映予定のアニメ、既刊のコミックスのネタバレが含まれます。

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鬼滅の刃』アニメ新シリーズ「刀鍛冶の里編」で、主人公の炭治郎とともに戦う鬼殺隊の「柱」は、甘露寺蜜璃と時透無一郎だ。とくに最年少の「柱」である無一郎は、刀鍛冶の里の戦いを通じて、その内面に劇的な変化を見せる。無口でミステリアスな無一郎の秘密が明らかになるシーンは、新シリーズの見どころのひとつだ。無一郎にまつわるエピソードをひもといていくと、浮かび上がるのは「幸せ」と「時間」というキーワードだ。まだ14歳の少年・時透無一郎が壮絶な鬼狩りに身をささげる意味を改めて考察してみる。

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■時透無一郎の天与の才

 刀鍛冶の里に登場する霞柱・時透無一郎は、なんとまだ14歳という若さだ。彼は11歳の頃に天涯孤独の身となり、その後、剣術未経験から2カ月という異例の早さで鬼殺隊の「柱」にまでのぼりつめた。「剣技の天才」が居並ぶ鬼殺隊の中でも、突出した才の持ち主である。

 同じく鬼殺隊の柱である宇髄天元は、鬼から「選ばれた才能」の持ち主だと言われた時に、即座に「俺程度で」と苦笑しながら、真の天才として無一郎の姿を思い浮かべている。また、無一郎は鬼の総領・鬼舞辻無惨に次ぐ、鬼側の実力者と対峙した際に、その上弦の鬼から「実に良き技 流麗で美しい」と称賛されており、彼の実力の凄まじさは今後も物語のいたるところで語られる。

■生き急ぐ時透無一郎

 隊服に包まれた体つきには幼さが残っており、愛らしい顔立ちもまだあどけない。鬼殺隊の象徴である「滅」の文字を背負っていることが痛々しくすらある。しかし、その外見に反して、普段ほとんどしゃべらない無一郎は、口を開いたかと思うと、周囲への配慮に欠けた言葉を口にする。

「君がそうやって くだらないことを ぐだぐだぐだぐだ言ってる間に 何人死ぬと思ってるわけ?」(時透無一郎/12巻・第102話「時透くんコンニチハ」)

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植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

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