口腔がんデータ
口腔がんデータ

 口の中や手足などに水疱性の発疹が出る「手足口病」も感染症によってできる口内炎の一つだ。子どもが中心の感染症だが、大人になって発症する場合もある。

 全身の病気が原因で口の中に症状が出ることもある。その一つがクローン病や潰瘍性大腸炎といった炎症性腸疾患(腸に慢性的な炎症が起きる病気)だ。

「口の中から腸まではつながっているので、腸管の病気が口の中に出てきても、不思議はありません。口内炎がなかなか治らず、検査をしても原因不明で、しばらくしてから下痢が止まらなくなり、クローン病が発覚したというケースもあります」(角田歯科医師)

 繰り返し口内炎ができる場合、慢性の炎症性疾患の一つである「ベーチェット病」も疑われる。皮膚や外陰部、目にも症状が出るが、特に口内炎は頻度が高い。

 そのほか、アレルギーや抗がん剤の副作用、入れ歯が舌や頬の内側に当たり続けることによる口内炎もある。

■かたいしこりに触れたらがんに注意

 最も注意しなければならない口の中の病気が、がんによるものだ。がんの初期は、粘膜が赤くなったり白くなったりすることもあるが、アフタ性口内炎のような口内炎ができることもある。一般的な口内炎とは、どのように違うのか。国立がん研究センター中央病院頭頸部外科長の吉本世一医師は、こう説明する。

「2週間以上経っても治らず、さらに悪化していくようなら、注意が必要です。自分でチェックする方法としては、目を閉じて口内炎の部分を指で触れるのがおすすめです。かたいしこりに触れる場合は、腫瘍を疑って早めに医療機関を受診したほうがいいでしょう」

 粘膜のただれ、出血、痛みといった症状が出たり、かむ、のみ込む、話すといった機能に支障が出たりしたときには、がんは進行している可能性が高い。

「実際には口内炎ができても、がんではないことがほとんどです。このため、口内炎だけでは受診につながりにくく、自分でがんを疑って受診するケースは生活に支障が出るほど症状が重く、進行している傾向があります。耳鼻科や歯科医院で異変が見つかり、紹介されてくるケースでは、早期に見つかることもあります」(吉本医師)

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舌がんが口腔がんの5割以上