写真はイメージです(Getty Images)
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作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、新型コロナについて。

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 先週から今週にかけて、6人の知人が新型コロナの陽性になった。そのうち2人とは一緒に食事をしていたので、症状はないのだけれど、この原稿を書き終わったらPCR検査に行ってこようと思う。スタッフにも数人陽性者がいて、断らなければいけない仕事も出てきた。第7波を肌で感じている。

 気がつけば、あっという間にコロナの国内の死者数が3万人を超えていた。オミクロン株に変異してから、「オミクロンは弱毒性だ」「重症化しにくい」「致死率が低い」などとはよく言われていたけれど、オミクロン株に置き換わった第6波の死者数は12000人を越えている。第1波から第5波までの全ての死者数をあわせても18000人強だったことを考えると、けっして凄まじい勢いで人が亡くなっているのがわかる。今の第7波も、毎日50人ほどの方が亡くなっている。致死率は低くても、死者の絶対数がこれだけあれば社会への打撃は大きい。

 先日、70代の母と話した。母はワクチンの副反応があまりに強かったため、4度目のワクチンを打つかどうか迷っているという。そして「コロナになって死んでも、仕方ないな」とも言った。は?と驚くと、「私の周りはみんなそんな感じ。コロナになったら死んじゃうかも……って、みんな覚悟してるわよ」と平然と言うので、なんて答えていいのかわからなかった。

 たとえ持病があっても、たとえ高齢者でも、肺炎になるまで病院にかかれず、40度の熱にうかされながら死を意識するような不安を強いられる人は多い。第7波に入り、東京ではこれまで陽性者に2箱配られていた食料が、1家族(3人)2箱に縮小されたという。「自分でなんとかして」と、政治から言われているようなものだ。先日、自民党・前政調会長の下村さんが陽性になったことを公表したが、風邪をひいたら国会内の医務室ですぐに診てもらえ、“症状がある人は受けられない”と国が決めた無料PCR検査を受ける下村さんのような方には、「国に助けてもらえない」という不安を感じている一般人の姿は、見えているだろうか。

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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