写真はイメージです(Getty Images)
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 超高齢社会を迎えて、病院は高齢患者であふれ、ポリファーマシー(多剤処方・多剤併用)が常態化しています。そんな中、身近な薬にも意外な副作用の可能性が潜んでいることがわかってきました。徳島大学名誉教授・和田眞さん(専門は有機化学)が、自身の体験から見えてきた医薬品の課題や、後発医薬品への疑問をまとめました。

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 医薬品の安全性を考えるとき、当然ながら副作用の面からも検証が必要となります。本稿では、筆者が経験した見逃すことができない最近の副作用例を示し、処方薬の8割を占める後発品を含めた医薬品の安全性について考えてみましょう。

■コロナ禍、思わぬ入院の原因は医薬品の副作用

 先般、病院から処方された胃酸分泌抑制の薬・プロトンポンプ阻害剤(PPI:proton pump inhibitor、世界的汎用剤)を飲み始めて3日後、悪寒と高熱を発症しました。服用したのは、国内医薬品メーカーの後発品です。
このコロナ禍、突然の発熱となればPCR検査や抗原検査(ともに陰性)が優先され、間質性腎炎による腎不全の発見が遅れました。2週間の緊急入院を要し、退院後も抗炎症剤を飲み続けています。腎生検(腎臓の組織を採取して顕微鏡で観察する検査)の結果、ドクターからは、この薬による重篤な副作用と診断されたのです。

■PPIは安全な医薬品ではなかったのか?

 近年PPIが原因と考えられる腎不全が急増しているとの臨床論文が発表されています。その内容を抄録します(※)。

1)PPIが市販されるようになったのは1990年前後、従来のH2受容体拮抗薬と異なり造血障害などの副作用が少なく、腎障害患者にも用量調節なしで使える安心な薬として、胃・十二指腸潰瘍や逆流性食道炎などの薬として、世界的規模で安易かつ長期に処方されてきた。
2)しかし、2010年代以降、副作用報告が様々な分野で発表され、その最たるものが薬剤性間質性腎炎である。

3)今世紀に入りオセアニアや北米の大規模なデータベースを用いた研究で、PPI処方症例に高頻度に慢性腎臓病発症が見られることが続々と明らかにされた。
4)その他にも肺炎、腸管感染症、認知症などの合併症の報告も同時期に相次ぎ、最近では、PPIが決して安全な胃薬ではないことが周知の事実となっている。
5)2018年の最新のメタ解析研究においても、PPI非投与もしくはH2受容体拮抗薬投与と比較して、PPI投与は急性腎障害や慢性腎臓病の発症に有意に関連するとの結論に至っている。

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間質性腎炎が与える影響とは?