残酷な事件や戦争を目の当たりにすると、「人間って争ってばかりの残酷な生き物だよね……」と感じてしまう人も多いと思います。『ざっくりわかる8コマ人類史』(監修/更科功 まんが/木下晋也)では、そんな人類にまつわる謎や疑問や迷信を、8コマまんがでざっくりゆる~く解説。今回は、人類は本当に残酷な生き物なのか?についてみていきましょう。

【人類について知る!8コマまんが】

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 前回の「浮気は人間の本能」 そんな言い訳を人類「進化」の観点で論破するでは、「人類は一途な生き物である」と解説しました。実は、「人類の一途さ=一夫一妻制」は人類に、直立二足歩行以外の「進化」ももたらしたことがわかっています。

 それは4本ある牙、つまり「犬歯」の縮小です。チンパンジーやゴリラ、ボノボといった類人猿は、いずれも氷柱(つらら)のように鋭く大きな牙を持っています。実際にチンパンジーは、オス同士で争ったときにかみついて相手を殺してしまうことも珍しくありません。

 一方で、ヒトの犬歯は、ほかの歯と同じくらいの長さで、形状もひし形に近く、殺傷能力はほぼありません。このように人類の犬歯が小さくなったのは、ほかの類人猿に比べて争う場面が減少し、牙の有用性がなくなったためだと考えられます。

 牙の大小はそれぞれの「夫婦(群れ)の形態」が大きくかかわってきます。チンパンジーやゴリラの主食は果物なので、狩りのために牙は使いません。使うのは、ほかのオスと争うときです。

 チンパンジーは乱婚、ゴリラは一夫多妻制のため、メスを奪い合ってほかのオスと戦うことが多くなります。このとき相手を戦闘不能にするための武器として、大きな牙が必要です。

 一方、人類の祖先は一夫一妻制を選択し、メスをめぐってほかのオスと争う機会が減少しました。それに伴い牙も不要となり、自然と小さくなったと考えられます。

 使わなくても一応残しておけば?と思うかもしれませんが、大きな犬歯を作るためには、そのぶん余計にエサを食べなくてはならないなど、余計なエネルギーがかかります。進化には、「とりあえず取っておこう」ではなく、断捨離の精神が宿っているのです。

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犬歯の大きさから「進化」をたどる