ケイリーン・フォールズさんの心をとらえたのは、このキュートなフォルム。「アラモード」はフランス語で「流行の」の意味ってこと、ご存じでした?
ケイリーン・フォールズさんの心をとらえたのは、このキュートなフォルム。「アラモード」はフランス語で「流行の」の意味ってこと、ご存じでした?

 生クリームの上で今にもプルンと動きだしそうなプリンと、色とりどりのフルーツたち。今すぐ、絵のなかの四角いアイスクリームスプーンを手に取り、ごっそりすくって口のなかをバニラとカラメルの香りでいっぱいにしたい……。アメリカ・ミネソタ州出身のフードイラストレーター、ケイリーン・フォールズさんのイラスト×エッセイ×ガイド本『日本のいいもの おいしいもの』の表紙に描かれた「プリンアラモード」を眺めていると、そんな衝動に駆られる。

【イラスト】ケイリーンさんが描いた、おいしそ~な「お好み焼き」

 このプリンアラモードは、東京・高円寺の「トリアノン洋菓子店」のもの。日本語と英語の紹介文は、こうだ。

「(前略)プリンアラモードを含めて、喫茶店メニューによくあるナポリタンやドリアも、横浜のホテルが発祥。トリアノンでは自家製のボリューミーなプリン、アイス、生クリーム、そしてフルーツをのせた王道プリンアラモードをいただけますよ」

 日本のデザイン事務所で、食品パッケージのフードイラストなどを描いていた2018年、コンビニでこんな食べ物と出合ったことが、水彩のフードイラストを描くようになったきっかけだった。

「レジの横に、三色団子が置いてあったんです。お部屋に持ち帰って水彩で描いてみるとかわいいし、何と言っても描き終わったら食べられる。もう、ちょっと、これは最高じゃないですか?と(笑)。日本には建物とか、風景とか、植物とか、描きたいモチーフがたくさんありますが、あちこち出かけて大好きな日本の食べ物を、食べて、描いて、ができたらいいなと思って、水彩では食べ物専門に描くことを決めたんです」(ケイリーンさん)

赤い大きな看板が目印の「トリアノン洋菓子店」。広いイートインスペースでレトロな家具に囲まれ、ケイリーンさんもにっこり
赤い大きな看板が目印の「トリアノン洋菓子店」。広いイートインスペースでレトロな家具に囲まれ、ケイリーンさんもにっこり

 日本のデザイン事務所では、今もスーパーマーケットなどでよく見かける商品のパッケージに描かれたフルーツのイラストなど、イラストレーターとして大きな仕事も数多く手がけてきた。食べ物のおいしさを、写真以上に理想的な状態で伝えられるフードイラストの魅力も、身をもって感じていたという。ただし、クライアントのさまざまなリクエスト通りにイラストを描くうち、自分ならではの絵のタッチがなくなってしまったと感じるようになった。

次のページ
マニアしか知らない店の隠れた逸品も