ゼミでLasso回帰と呼ばれる予測モデルを使って器楽曲と声楽曲の特徴がどのように経年変化するか説明をする三木さん(同志社大学)
ゼミでLasso回帰と呼ばれる予測モデルを使って器楽曲と声楽曲の特徴がどのように経年変化するか説明をする三木さん(同志社大学)

 学生たちは関心の幅が広く、文系、理系の学生が交じって学んでいるという。文系出身者にとって数学はハンディにならないのだろうか。

「最低限押さえてほしい理論は、時間をかけて丁寧に説明します。高校までの反復演習中心の学習と、大学以降の学習は別物です。数学は演習からではなく、理論の歴史的背景も含めて学ぶため、学生は文理の垣根を越える体験により目からウロコが落ちるようです」(同)

 異なるコースの学生同士や、企業などから専門家を招いてディスカッションをする授業も多く、コミュニケーション能力が重要だという。

 河瀬准教授の研究室に所属する修士2年の三木大輔さんは、ベートーヴェンの様式区分の妥当性を、機械学習法を使って検証している。

「19世紀以降の音楽学者はベートーヴェンの音楽を作曲された時期によって前期、中期、後期に分けているのですが、実は時代区分の根拠が不明瞭です。 そこでデータ化した大量の作品から楽曲特徴量を抽出し、機械学習法を使って音楽学者の論証の基準を明確にすることを試みています」(三木さん)

 同大学文化情報学部の3年次に少人数の学生が研究活動を行う「ジョイント・リサーチ」を履修した際に音楽文化に対するデータサイエンスの応用可能性を感じ、大学院への進学を決めた。英語も堪能で学部4年次から国際会議で発表し、異分野の研究者との議論も経験した。河瀬准教授の言うとおり、学問の垣根を越えた知の実践の重要性を実感したという。

「研究者が皆、自分の専門外に明るいわけではありません。文化現象を読み解くには、異分野の人と協同するための知見と方法論が求められます」(同)

■経営と情報をテーマに様々なアプローチ法を学ぶ

 経営と情報をテーマに、幅広く学ぶのが大阪経済大学の経営情報研究科だ。データサイエンス専門家、社会調査専門家など5コースを展開。他の研究科の授業を履修することも可能だ。

「大学院へは明確な目的を持って進学する人が多いのですが、本研究科は多岐にわたる分野の教員がそろっているので、進学してから専門を決めることもできます」(中村健二教授)。

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プログラミングはあくまで言語