ヤクルトの石川雅規
ヤクルトの石川雅規

 ヤクルトの石川雅規が6月19日に通算181勝目(179敗)を挙げた。一方で「179敗は負けすぎ」との声も聞こえる。石川は本当に「負けすぎ投手」なのか。あまり目にしない「通算敗戦数」ランキングの15位までを列挙し、その背景を探ってみた。

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1.金田正一(国鉄ほか)/298敗400勝、勝率.573

2.米田哲也(阪急ほか)/285敗350勝、勝率.551

3.梶本隆夫(阪急)/255敗254勝、勝率.499

4.東尾 修(西武)/247敗251勝、勝率.504

5.鈴木啓示(近鉄)/238敗317勝、勝率.571

 金田正一はFA制度の前身ともいえる「10年選手制度」で巨人に移籍した。それまで国鉄で353勝267敗、勝率.569。国鉄15年間のチーム順位は3位が1度だけで、残りはすべてBクラス。口さがない人は「リリーフで出てきて他人の勝ち星をさらっていった」と言うが、そうでなければ勝てなかったし、史上最多敗戦投手でもある。15年間で344完投もしていて、弱いチームで驚異的な勝率だった。巨人では5年間で47勝31敗。移籍したのはV9がスタートした年で、5年間すべてで優勝を味わっている。

 米田哲也は、阪急の「灰色の時代」と「黄金時代」の両方を経験している。敗戦数も勝利数も史上2位なのは納得の数字だ。梶本隆夫は、その米田と「ヨネ・カジ」コンビと呼ばれ、左(梶本)右(米田)のエースとして阪急の屋台骨を支えた。「10対0で勝つより0対1で負けたほうがいい」という本人談が象徴するように、通算200勝投手で敗戦数が上回っているのは梶本だけだ。

 東尾修は、1985年終了時点で通算218勝218敗と並んでいた。75年に23勝で最多勝の初タイトルを獲得したが、リーグ最多敗戦(15敗)でもあった。負け数の多さは、逆に言えば弱いチームをエースとして支えてきた勲章でもある。鈴木啓示は、東尾同様、一つのチームで長い間プレーし続ける「フランチャイズプレーヤー」であった。チームが弱い時代も長かったが、通算340完投はパ・リーグ1位、通算無四球完投78も史上1位。「1人で投げ勝った」イメージも強い。

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