「桜を見る会」前夜祭でサントリーが酒を無償提供していた問題で、法務省、総務省、国税庁へのヒアリングが行われた
「桜を見る会」前夜祭でサントリーが酒を無償提供していた問題で、法務省、総務省、国税庁へのヒアリングが行われた

「桜を見る会」の前夜祭は安倍元首相の後援会が主催し、13年から19年にかけて、地元の支援者らを招き、都内のホテルで毎年1回開いていた。1人5千円程度の会費制で開いていたが、提供される料理や飲み物などは5千円をゆうに超えるものだったことから安倍氏側の補填(ほてん)が疑われた。

 実際、安倍氏側が15~19年の5年間で計約900万円を補填していた。

 東京地検特捜部は、参加者らに会費を上回る利益を受けた認識がないことから、選挙区内での寄付を禁じた公職選挙法違反に関しては、安倍氏も元公設秘書の配川氏も不起訴(嫌疑不十分)となった。

 ただし、配川氏は16~19年の4年分の後援会の政治資金収支報告書に、安倍氏側が補填した約708万円を含む計約3022万円の収支を記載していなかった政治資金規正法違反(不記載)の罪で、100万円の罰金刑を受けた。

 岩田氏が共同代表を務める市民団体とは別に、神戸学院大学の上脇博之教授は6月15日、サントリーホールディングスから前夜祭に提供された酒類約45万円相当を収支報告書に記載しなかったとして、政治資金規正法違反容疑で安倍氏ら4人を東京地検に告発したことを明らかにした。

「サントリーの無償提供については、検察はこれまで全く起訴していない。これまでの『桜を見る会』前夜祭に関する起訴状には無償提供は出てこないですからね。検察は軽視していたのであまりそこに注意がいかなかったのか、あるいはわざとおめこぼししたのかのどっちかだと思います。2年前、サントリーの無償提供の話が出ていれば、安倍氏はさらに窮地に追い込まれていたはずです。検察は安倍氏に限りなく有利な処分をしてしまった。もっと公にすべきことがあったのにしていなかった。ところが、刑事確定記録を閲覧したらバレちゃったということですね」

 上脇教授はそう話した上で、こう指摘する。

「サントリーが無償提供したのは公選法ではなく、政治資金規正法違反の問題になります。企業は政党や政治資金団体以外に寄付をしてはならない。安倍事務所は、それがバレるのがまずいから政治資金収支報告書にも書かなかったとなると、違法な企業献金を受け取ったという違反と収支報告書に書かなかったという二重の違反にあたる可能性があります。不記載は時効が5年なので、17年分から19年分はまだ罪に問えます」

 安倍氏の事務所には質問状を送ったが、期日までに回答はなかった。

(AERA dot.編集部・上田耕司)

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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