巨人時代の入来祐作(OP写真通信社)
巨人時代の入来祐作(OP写真通信社)

 一歩間違えば両軍ナイン総出の乱闘になりかねない危険球だが、打者が怒るのは当然として、時には投手が逆ギレしたり、挑発的な態度を取る場面も見られる。

【写真】巨人の「暴れん坊助っ人」といえばこちら

 危険球に怒った助っ人に対し、一歩も引かずに応戦の構えを取ったのが、楽天・小山伸一郎だ。

 2013年6月27日の西武戦、10対1と大きくリードして迎えた9回2死、打者・スピリーに対し、小山の初球、143キロ直球が大きく外れ、背中を通過した。

 スピリーは激高し、マウンドに詰め寄ったが、小山も謝る素振りも見せず、「来るなら来い!」とばかりに胸を突き出した。

 睨み合った2人が距離を詰めていくのを見て、両軍ナインが飛び出してきた。西武・河田雄祐三塁コーチが、小山のユニホームを掴む。「(シャツが破れ)ビリビリって音がしました」(小山)。

 楽天側も負けていない。ラズナーが渡辺久信監督を捕まえて引きずり回し、小山を守ろうと輪の中心に飛び込んできたジョーンズも、激しい剣幕で食ってかかる。さらに星野仙一監督も参戦し、渡辺監督の腕を掴んで取り押さえた。

 実は、この一件には伏線があった。初回にマギーが三ゴロに倒れた際に、一塁走者のジョーンズがスパイクの刃を向けて二塁にスライディングし、山崎浩司と交錯。併殺崩れの間に1点が入り、左足首を負傷した山崎は交代した。

 そして、7回にジョーンズが山本淳から死球を左手に受けたことを、楽天側は報復と受け止める。そんなピリピリした空気が、スピリーへの危険球で一気に爆発した。小山が挑発的な態度を取ったのも、「そっちこそ!」という気持ちからだったと思われる。

 ジョーンズのスライディングについて、星野監督は「当たり前のプレー。三塁(手)がジャックルして、二塁に投げるのが遅かった」と故意ではなかったことを強調。一方、河田コーチも「ジョーンズの死球だって、投手の失投。これを報復と取られたんじゃ、いつも喧嘩しないとダメ」と説明した。

 たとえ故意ではなかったとしても、疑わしいプレーが重なると、感情にブレーキがかからなくなるのも、野球の怖さである。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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巨人で“逆ギレ”した投手は?