これらの人たちに共通するのは、順調な人生なら特に見直す必要もないような「問い」──つまり、自分の人生とはそもそも何だったのか、何のために人は生きているのか、働くとはそもそも何なのだろうか、といった本質的な「問い」──と向き合う時間を持ってきた、もしくは、持たざるをえなかった、ということです。

 こうした「問い」は、私たち日本人にとってあまり慣れてはいない、決まった一つの正解が用意されているわけではない「問い」です。

 しかも、考えることなしには、思考力なしには向き合うことができない「問い」でもあるのです。

 つまり、これらの人たちは、本人が意識しているかどうかは別にして、今、日本企業が最も必要としている「考える力」を駆使せざるをえないような経験をしてきたということです。私が言う「違い」の持つ意味とは、まさにこのことです。

■考える力を身につけるために欠かせないステップ

 このことからわかるのは、考える力を身につけるためには、正解が用意されていない「問い」と本気で向き合うというステップがどうしても必要とされるということなのです。

 ただ、残念なことに優秀であったはずの企業人の多くは、こうした経験をまったくしないままに会社人生を送っていることに何の疑問も持っていないのが現実です。

 それというのも、特に「考える」という力を持っていなくとも、「どうやるか」さえ考えていれば、従来通りの日常業務なら回していくことはどうにかこうにか可能であるため、自分が思考停止に陥っていることに気づきにくいからです。

「どうやるか」だけでさばくような思考姿勢であっても、予定調和や前例踏襲での対応を求められるだけであれば、特に問題は出てこないのです。

 この「どうやるか」だけでさばく思考姿勢こそが、私が問題にしている無自覚の「枠内思考」というものです。

 つまり、何らかのルールや約束事、または前例などを制約条件として、それを枠と捉えることで、枠を前提として枠の範囲で「どうやるか」だけを選択肢の中から選ぶ、という思考の仕方に無自覚になっている、ということです。