ロケの達人と言われる「なすなかにし」
ロケの達人と言われる「なすなかにし」

 お笑い界では「ロケが面白い芸人は売れる」という定説がある。最近では千鳥やかまいたちがその定説通りに順調に仕事を増やしている。

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 ロケというのは、芸人としての総合的な能力が求められる高度な仕事である。街頭や店舗で一般人と絡み、必要な情報をわかりやすく伝えつつ、その場にあるものだけで笑いを生み出していかなければいけない。予定外のハプニングに対応するアドリブ力や、長時間にわたって集中力を保つ根性も求められる。

 ロケが上手い芸人はテレビでも重宝されるし、そこで実力が認められればいずれはスタジオに呼ばれることになる。ロケこそはテレビに出る芸人の登竜門のような仕事なのだ。

 最近、ロケの達人として注目されているのが、なすなかにしである。那須晃行と中西茂樹の2人から成るなすなかにしは、いとこ同士でコンビを結成したという変わり種である。兄弟コンビはたまにいるが、いとこというのは珍しい。子供の頃はよく一緒に遊んでいたようで、今でもその延長線上にあるようなゲーム的な和気あいあいとした掛け合いを見せている。

 漫才でもロケでもつかみが早いのが自慢で、最初の一発で笑いを取り、見る者を自分たちの世界に引き込んでいく。2人で演じる数多くのコンビ芸をロケにも生かしている。昨年は170本以上のロケ仕事をこなしてきたという。

 彼らは2001年にコンビを結成して、大阪で活動を始めた。2003年には『M-1グランプリ』で準決勝に進出した。その後、関西のお笑いコンテストでも上位入賞を果たしてきた。2002年の『M-1』で優勝したますだおかだに続く松竹芸能の本格派漫才師として期待されながらも、テレビではなかなかチャンスをつかめず、2010年に東京に進出した。

 その後は、一時的にコンビ名を変えたものの鳴かず飛ばずだった迷走期を経て、徐々に運気が好転。『ウチのガヤがすみません!』(日本テレビ)に出演して、歳の離れた若手芸人たちと横並びになってベテラン風の芸を見せて人気を博した。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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