恋柱・甘露寺蜜璃(左)と霞柱・時透無一郎(画像は「刀鍛冶の里編」公式HPより https://kimetsu.com/anime/katanakajinosatohen/)
恋柱・甘露寺蜜璃(左)と霞柱・時透無一郎(画像は「刀鍛冶の里編」公式HPより https://kimetsu.com/anime/katanakajinosatohen/)

【※ネタバレ注意】以下の内容には、今後放映予定のアニメ、既刊のコミックスのネタバレが含まれます。

【写真】若い頃、蜜璃の「師匠」だったのは人気の「柱」

 放映が待ち遠しい『鬼滅の刃』アニメ3期「刀鍛冶の里編」では、恋柱・甘露寺蜜璃と霞柱・時透無一郎という2人の「柱」が参戦する。2人とも原作で特異な存在感を放ち、コアなファンも多い。生い立ちや性格は全く違う2人であるが、実は知られざる共通点も多く、「刀鍛冶の里編」でこの2人が「柱」のメインキャストであることは決して偶然ではない。蜜璃と無一郎の「柱」としての在り方、「天与の才」が彼らにもたらした「運命」について考察する。


*  *  *

■蜜璃と無一郎の「天与の才」

 甘露寺蜜璃と時透無一郎は、鬼殺隊の実力者である「柱」の中でも特別な「天与の才」の持ち主である。彼らの豊かな才能は、鬼殺隊を統べる産屋敷耀哉らの言葉でも明らかだ。

<素晴らしい 君は神様から特別に愛された人なんだよ蜜璃>(産屋敷耀哉/14巻・第124話「いい加減にしろ バカタレ」)

<すごいね! 僕たち剣士の子孫なんだって しかも一番最初の呼吸っていうのを使う凄い人の子孫で>(時透無一郎/14巻・第118話「無一郎の無」)

 産屋敷耀哉による「神様に愛された人」という言葉は、まちがいなく蜜璃の肉体への最上級の称賛だった。一方、無一郎は、まだ刀を握ったことすらない段階で、耀哉の命を受けた妻・あまねから、鬼殺隊への入隊を願われるほどだった。無一郎は、伝説的な剣豪の子孫にあたる人物だったのだ。肉体と血統、いずれも天から授かった才能だ。

 鬼殺隊の隊士は、そのほとんどが大切な人を鬼に殺された者で、他には才能を認められ入隊に至った者、自ら志願した者などがいる。鬼殺の名門である煉獄家の出身である炎柱・煉獄杏寿郎でさえも厳しい訓練の果てに入隊しており、無一郎のように才能が開花する前に「スカウト」されるのは極めて珍しいといえよう。

■どうすることもできない「欠点」

 しかし、蜜璃と無一郎はこれほど比類なき「才能」を持ちながら、同時に本人にはどうすることもできない「欠点」があり、不安を抱えていた。

著者プロフィールを見る
植朗子

植朗子

伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士(学術)。著書に『鬼滅夜話』(扶桑社)、『キャラクターたちの運命論』(平凡社新書)、共著に『はじまりが見える世界の神話』(創元社)など。

植朗子の記事一覧はこちら
次のページ
「柱なのに」という焦り