秀島史香さん(写真:著者提供)
秀島史香さん(写真:著者提供)

 なぜラジオは3時間の生放送でも聞き続けられるのか? ラジオDJとして25年、第一線で活躍し続ける秀島史香さんですが、実は「もともと緊張しがちで人見知りで心配性」といいます。そんな秀島さんだからこそ見つけられた、誰でも再現できる「人が聞き入ってしまう会話のレシピ」を一冊に詰め込んだ『なぜか聴きたくなる人の話し方』からの連載。今回は、言葉を届けたい相手を意識することの大切さをご紹介します。

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■どのように話すのが、正解?

「話す仕事」において、あまりにも根源的な問いなのですが、「そもそもどのように話せばいいか、わからない」。駆け出しのラジオDJの多くが、こんな悩みを持っています。

 番組にもよりますが、たいていはおおまかな台本がありますし、放送で使ってはいけない言葉などは教えられます。ただ、DJの仕事は個性が尊重される部分が多く、自由度が高い分、真っ白な空間に放り出されたようで、みんな戸惑ってしまうのです。

 マイクの前に一人で座って、いざ本番となると、「どんな声を出せばいいんだろう? もっと明るく? もっと大人っぽく?」「口調は丁寧に? それとも少しくだけた感じに?」と、考え始めると止まらない。「リスナーもみんなそれぞれ違った感覚を持っているだろうし、一体どう話せばいいかわからない」と延々悩んでしまうのです。

 そんなとき、ディレクターや先輩がくれたアドバイスは、「誰か一人に向かって話してみるといいよ」というものでした。

 いつも世間話で一緒に大笑いしている友人、憧れの先輩、気の合う後輩など特定の誰かを思い浮かべて、その人に語りかける気持ちでしゃべる。

 すると「あ、そうか、そもそも会話ってこういう気持ちになるんだった」と、普段の感覚を思い出せるのです。不思議と心も落ち着いて、原稿をただ読んでいるだけではない、自分本来の自然な話し方になっているもの。この自然な姿こそが、その人の「個性」であり、よさだと思います。

 では、想像上で向かい合って話すエア会話の相手として、私は誰を思い浮かべているのか。

 例えば、NHKで仕事をする際は、民放に比べて、「話すスピードが速くなりすぎないように」という現場での共通認識があります。これは、幅広い年齢の視聴者に理解しやすくするため。

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秀島史香

秀島史香

秀島史香(ひでしま・ふみか)ラジオDJ、ナレーター。1975年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。慶應義塾大学在学中にラジオDJデビュー。映画、テレビ、CM、美術館音声ガイドなど多岐にわたり活動している。現在FMヨコハマ『SHONAN by the Sea』、NHKラジオ『ニュースで学ぶ「現代英語」』、NHK Eテレ『高校講座 現代の国語』などに出演中。著書に『いい空気を一瞬でつくる 誰とでも会話がはずむ42の法則』『なぜか聴きたくなる人の話し方』(共に朝日新聞出版)。ハスキーで都会的な声質、あたたかい人柄とフリートークが、クリエイターからリスナーまで幅広く人気。

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そんなとき、秀島さんがイメージするのは?