「いい病院」ムック創刊20年記念セミナーの第3部を要約してお届けします
「いい病院」ムック創刊20年記念セミナーの第3部を要約してお届けします

 大きな病気になったとき、「病院さえ決まれば安心」とは言えません。提示された複数の治療法の中からどの治療を選ぶかなど、診断後も患者自らが意思決定することを迫られる場面は多くあり、そこでまた悩むことになります。

 週刊朝日MOOK「手術数でわかる いい病院」の創刊20年を記念して4月24日に開催したオンラインセミナーでは、著名な4人の医師が登壇。第3部では「大きな病気にかかったら……治療選択と心の整理」と題して、東京都立駒込病院前院長の鳶巣賢一医師にお話をうかがいました。同院ではがん患者を対象に「意思決定支援外来」を設けており、鳶巣医師はその発起人です。聞き手は同ムックの杉村健編集長が務めました。第2部に続き、セミナーの模様をお届けします。(以下、敬称略)

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■十分に病気を理解し、治療選択できる人はわずか

編集長:鳶巣先生は「意思決定支援外来」を2019年に開設されたということで、まずは、その経緯について教えてください。

鳶巣:患者さんはがんと診断された後、自分の置かれた状況を理解し、意思決定を迫まられる局面が何度かあります。初回の治療法の選択、その治療がうまくいかなくなったときの治療法の再選択、さらに治療が手詰まりになったときにどうするのか、といったことです。患者さんはその都度、医療者から選択肢を提示されるものの、十分に病気を理解して意思決定ができている人は少ないことを、長年感じていました。

患者さんが相談・支援を必要とするタイミングは何度かある ※セミナー資料より抜粋
患者さんが相談・支援を必要とするタイミングは何度かある ※セミナー資料より抜粋

■患者さんと医療者のギャップを埋める存在が必要

鳶巣:特に近年は診断から治療、退院までの期間が短く、患者さんが納得いくまで考えたくても、その余裕がありません。医療者も患者さんの思いに応えたいのですが、こちらもまた、多忙という事情があります。患者さんもそうした空気を察して「主治医に聞きたいことを聞けない」という事情もよく理解しています。

 こうした患者さんと医療者のギャップを埋める立場を誰かが担う必要があるのではないか。診療の間の少しのすき間に、1回、じっくりと腰をすえてご自分の状況の理解をしていただいたり、何をどう選ぶかの話をしたり、さらに医療者の考えを患者さんに知っていただく場を作ってはどうかと思って、意思決定支援外来を開設したのです。

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意思決定支援外来のサポート、四つのステップ