※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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マイホームを持っても、やがて子どもが独立し、自分やパートナーの病気、連れ合いの死去などをきっかけに、このまま自宅に住み続けていいものだろうか、と思う人は多いようです。人生100年時代を迎え、“老後の生活”は20年、30年と続きます。「自分らしく安全快適に過ごしたいなら、住み替えを考えて」と老いの工学研究所理事長の川口雅裕氏は言います。高齢期の住み替えとはどのようなものなのでしょうか。詳しくうかがいました。

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■高齢者世帯の約3割は独居高齢者という現実

 内閣府の令和3年版「高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者がいる世帯数は約2600万。全世帯のおよそ50%を占めています。なかでも高齢者だけの世帯数は年々増加して、2600万世帯の約29%が高齢者の独居。さらに夫婦のみの高齢者世帯(約32%)と合わせると、約6割が高齢者だけの世帯だと発表されています。

 いまは家族やパートナーがいても、いずれは誰もが一人暮らしになる、それは避けられない現実です。そんな視点でわが家を眺めてみると、「一人になって、体が思うように動かなくなっても、この家に住み続けられるだろうか」と不安に思うことはありませんか。愛着のある、住み慣れたはずのわが家なのに、加齢に伴って不便や不安を感じることが多くなってきていませんか。

NPO法人「老いの工学研究所」理事長 川口雅裕
NPO法人「老いの工学研究所」理事長 川口雅裕

 川口雅裕氏が理事長を務める老いの工学研究所が高齢者を対象におこなったアンケート調査では、高齢者の多くが現在の住まいに不満、不安を感じているという結果になりました。

 不満として、「管理が大変(広すぎる、老朽化) 59.6%」「室内の段差や階段 36.9%」「地震などの災害が心配 24.1%」がトップ3。そのほか、坂道が多い、通院や買い物が不便、などが挙がっています。加齢に伴って体力や筋力が低下したり、またやる気が出ずについ面倒になったりして、徐々に使い勝手が悪くなっていくようです。

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高齢者の事故の8割近くが自宅で起きている