「いい病院」ムック創刊20年記念セミナーの第1部を要約してお届けします
「いい病院」ムック創刊20年記念セミナーの第1部を要約してお届けします

 大切な人や自分が大きな病にかかったとき、限られた時間で膨大な情報の中から、適切な治療法やいい病院を見つけ出すのは大変なことです。だからこそ、もしもに備えて知っておきたいことがたくさんあります。週刊朝日MOOK「手術数でわかる いい病院」の創刊20年を記念して4月24日に開催したオンラインセミナーでは、著名な4人の医師が登壇。第1部では「名医対談“トップ病院”の取り組みと最新治療」と題して順天堂大学順天堂医院 心臓血管外科特任教授の天野篤医師と国立がん研究センター中央病院 呼吸器外科長の渡辺俊一医師が対談しました。その内容を前編後編の2回に分けてお届けします。

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 上皇さまの執刀医として知られ、心臓手術の分野で約20年にわたり順天堂大学順天堂医院の心臓血管外科を率いてきた天野篤医師と、本誌手術数ランキングで肺がん手術数20年連続1位の国立がん研究センター中央病院で呼吸器外科長を務める渡辺俊一医師。二人が対談するのは今回が初めてです。この20年間で取り組んできたことから最新治療まで、ここでしか聞けないお話をうかがいます。(以下、敬称略)

■医師の知識不足は許されない。2人が手本とする、ある医師の教え

天野:今日はお会いできるのを楽しみにしていました。実は私の患者さんには、渡辺先生に肺がんの手術をしてもらった方がいて、よく先生の話をうかがっています。

渡辺:私も患者さんから先生の話を伺っていたので、お会いできるのを楽しみにしておりました。本日はどうぞ、よろしくお願いします。

天野:私は渡辺先生のご出身である金沢大学附属病院の元病院長で、現・名誉教授の河崎一夫先生をたいへん敬愛しております。個人的にも2度お目にかかったことがあるのですが、私が順天堂大学の教授になる直前に、朝日新聞に掲載された河崎先生の寄稿「私の視点・医学生へ 医学を選んだ君に問う」(2002年4月16日付・朝刊)を読んで、非常に感銘を受けました。記事を読んで自分の診療の見直しを迫られたというか、見直しをしなければならない動機づけとなりました。

渡辺:私の大学時代、河崎先生は眼科の教授をされていまして、恩師でもあります。実は私もちょうど国立がん研究センターに赴任した時期にこの記事に出合いまして、天野先生と同じように感銘を受けたのです。以後、研修医にはこの記事をコピーして渡すようになりました。記事は医学生に向けたものですが、当然、医師にも通じるもので、私にとっても指針となっています。

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両医師の心に響いた、河崎医師の言葉とは