1992年ピザポテト
1992年ピザポテト

『ピザポテト』を開発するときはチーズフレークを使ったあの見た目にこだわったんです。ピザの味だけなら、粉をふりかけるだけでも出せるんですが、チーズが溶けたような感じが重要だと考え、チーズのつぶつぶを残す製法にこだわりました。結果として、チーズがポテトチップスにまともにくっつかずかなり苦労をしました。堅あげポテトにしても、ピザポテトにしても、色々試していく中で結局は、手間がかかる手法を選んでいくんです。簡単な道を歩んだときにはそれなりの製品にしかならない。やはり、自分の感覚として「あ、この堅さだな」、「この見た目はおもしろい」と琴線に触れるものができるまで、徹底してこだわることが大切なんだと思います。こういうことをやっていると最初は全然儲からないんですよ。会社から「成果はどうか」と問われると、「ごめんなさい」となってしまうんですが、そこをどう耐えられるかも重要です。「巧(たくみ)から仕組みへ変えないとダメだ」と言われますが、その辺りは会社としてうまくやっていく素地がカルビーにはありました。

――プライベートでは、ポテトチップスは食べていますか?

 食べてますよ。最近は堅あげポテトが多いですね。家に買い置きがあります。当社の『かっぱえびせん』もよく食べます。他社の製品ですが、柿の種をよく食べています。Jリーグの試合を見るのが好きなんですが、テレビで見ながらちょこっと食べています。いずれもすばらしい商品です。

――柿の種のどこに琴線が触れましたか。

 柿の種とピーナッツの絶妙なバランスが私の琴線に触れました。あれにはかなわないです。柿の種とピーナッツの個々の美味しさもありますが、バランスが秀逸です。ロングセラー商品ですが、ブランドがブレないのも素晴らしいです。ブランドって、担当者が変わったり、同じ担当者でも長くやってきて飽きてくると、変えたくなるんですよね。そのブランドを理解して、そのブランドの中で変えられればいいんですが、「どうしちゃったんだろう、この商品は」みたいな悲劇はよく目にします。ブランドはお客様の心の中にあるもので、企業はその期待を裏切ってはいけない、ということを、堅あげポテトでもピザポテトでも強く意識していました。

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もう一つ、「絶対に勝てない」と言ったお菓子があった