秀島史香さん(写真:著者提供)
秀島史香さん(写真:著者提供)

 なぜラジオは3時間の生放送でも聞き続けられるのか? ラジオDJとして25年、第一線で活躍し続ける秀島史香さんですが、実は「もともと緊張しがちで人見知りで心配性」といいます。そんな秀島さんだからこそ見つけられた、誰でも再現できる「人が聞き入ってしまう会話のレシピ」を一冊に詰め込んだ『なぜか聴きたくなる人の話し方』からの連載。今回は、会話での無言の「間」が実は大切だという理由をご紹介します。

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■「3秒の間」で語る

 新型コロナウイルスによって、世界中のすべての人にとって初めての経験が続いています。日常生活は様変わりし、経済活動も、学校生活も、人とのお付き合いも、あらゆることに「大丈夫だろうか」と不安がつきまとう日々。

 そんな中、私が担当するラジオ番組にも「海水浴場の開設が中止されて、海の家を開けず、経済的に苦しい」「目標にしていた高校生最後の大会が中止になってしまった」など、つらい経験をした方からのメッセージが寄せられました。読みながら胸が締めつけられるようで、それぞれの状況や気持ちを考えると、伝える言葉が見つからないこともしばしばです。

 あなたも、友人や職場の仲間から深刻な相談や打ち明け話をされて、どんな言葉をかければいいのか悩んだ経験はありませんか?

 私たちラジオDJは本来、言葉で何かを伝えることが仕事です。だからこそ、新人時代は、どんな話題に対しても「何か気の利いたことを言わなくちゃいけない!」という意識にしばられていました。

 何しろ声だけの世界なので、「しーん」という無言の「間」は何よりも怖い。言葉にしにくいと感じる場面でも、「ここはプロとして何か言わなくちゃ!」と言葉をひねり出していたのです。

 けれども、ただその間を埋めるためだけに発する言葉は、本心から離れてしまいがちです。

 切羽詰まった状態なので、「今のこの場をしのがなきゃ!」と焦って口にしてしまう。でも、そうやって出てきた言葉は、気持ちとかけ離れていたり、場違いだったり。さらに悲しいことに、やっとのことでひねり出しても、相手には「苦し紛れだよね」と見透かされてしまうのです。やっぱり声に出てしまうんですよね。これまで生放送でどれほど失敗したことか。

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秀島史香

秀島史香

秀島史香(ひでしま・ふみか)ラジオDJ、ナレーター。1975年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。慶應義塾大学在学中にラジオDJデビュー。映画、テレビ、CM、美術館音声ガイドなど多岐にわたり活動している。現在FMヨコハマ『SHONAN by the Sea』、NHKラジオ『ニュースで学ぶ「現代英語」』、NHK Eテレ『高校講座 現代の国語』などに出演中。著書に『いい空気を一瞬でつくる 誰とでも会話がはずむ42の法則』『なぜか聴きたくなる人の話し方』(共に朝日新聞出版)。ハスキーで都会的な声質、あたたかい人柄とフリートークが、クリエイターからリスナーまで幅広く人気。

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言葉で伝えることがコミュニケーションのすべてではない