2007年の夏の甲子園を制した佐賀北のナイン
2007年の夏の甲子園を制した佐賀北のナイン

 かつては広島商(広島)、松山商(愛媛)、高松商(香川)、県岐阜商(岐阜)、箕島(和歌山)、池田(徳島)など公立高校が甲子園でも多く優勝を重ねていたが、近年は私立の優位が続いている。最後に公立高校が甲子園で優勝したのはセンバツでは2009年の清峰(長崎)、夏の選手権では2007年の佐賀北(佐賀)であり、既に10年以上が経過している。2018年夏には吉田輝星(現日本ハム)を擁する金足農(秋田)が快進撃で勝ち上がったが、決勝では大阪桐蔭(大阪)の前に屈した。今後、公立高校で甲子園優勝を果たすチームがあるのか。近年の戦いぶりから探ってみたいと思う。

【写真特集】伝説のマネージャーも登場! 増刊『甲子園』の表紙を飾った美少女たち

 ここ数年、最も安定した戦いぶりを見せているチームと言えば明石商(兵庫)と高松商の2校になるだろう。明石商は明石市が2005年に全国から野球指導者の公募を行い、明徳義塾中で全国大会優勝経験のあった狭間善徳監督を採用。2007年から監督に就任してから本格的な強化がスタートした。当初はなかなか結果が出なかったが、2011年春に県大会優勝を果たすと、2016年には吉高壮(現日本生命)を擁してセンバツに初出場し、ベスト8に進出。2018年夏からは3季連続で甲子園出場に出場し、2019年は春夏とも準決勝まで勝ち進んでいる。

 松本航(西武)、水上桂(楽天)、山崎伊織(巨人)、中森俊介(ロッテ)、来田涼斗(オリックス)と5人もの選手をプロに送り出しているのも見事だ。市の全面的な支援を受けて球場や室内練習場など充実した設備を誇り、プロに選手を送り出している実績もあって有望な中学生も数多く入学してくるようになっている。今後もコンスタントに甲子園で勝ち進む可能性は高いだろう。

 高松商も復活のきっかけとなったのは狭間監督と同じく中学野球で実績を残した長尾健司監督が就任したことだ。2014年に監督に就任すると、2015年には秋の四国大会を制すると、その後に行われた明治神宮大会でも優勝。翌年春のセンバツでも決勝で智弁学園(奈良)に延長戦でサヨナラ負けしたものの、優勝まであと一歩に迫り、名門復活を強烈に印象付けた。その後も3度甲子園に出場し、昨年夏も優勝した智弁和歌山(和歌山)と接戦を演じるなど、強さを維持している。

著者プロフィールを見る
西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

西尾典文の記事一覧はこちら
次のページ
名門復活で忘れてならないのは…