秀島史香さん(写真:著者提供)
秀島史香さん(写真:著者提供)

 なぜラジオは3時間の生放送でも聞き続けられるのか? ラジオDJとして25年、第一線で活躍し続ける秀島史香さんですが、実は「もともと緊張しがちで人見知りで心配性」といいます。そんな秀島さんだからこそ見つけられた、誰でも再現できる「人が聞き入ってしまう会話のレシピ」を一冊に詰め込んだ『なぜか聴きたくなる人の話し方』からの連載。今回は、「話が単調になりがち」という人にぜひ試してもらいたい、「セリフ」の活用法をご紹介します。

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■会話の現場でも起きる「高速道路催眠現象」

 ラジオ番組のゲストに、時折お笑い芸人さんをお迎えします。毎回思うのは、一言目からなぜあんなに人を惹きつけることができるのか。とくにうまいなぁと思うのが、会話の再現です。

「街で、おばちゃんに『あんた!』って呼び止められて、『わ、気づかれたか、オレも人気者やな~』って思って振り向いたら、いきなり『その服なんぼ? どこで買うたん?』」

 登場人物のセリフが生き生きしていて、まるでその人が乗り移ったかのよう。これぞラジオ的!と思います。

 対面で話をするのであれば、身振り手振り、表情などで情報を伝えられますが、ラジオでは、声だけで伝えなければなりません。だからこそ、登場人物のセリフ、つまりカギカッコを効果的に入れることで話が俄然イキイキしてきます。

 オープニングトークでは、最近あった印象的な出来事や季節の話題など、DJ自身が見たり、経験したりしたことを話していますよね。その際、カギカッコが入っていると、その場で再現ドラマを見ているような臨場感が伝わるので、私も実践しています。

 例えばこんなふうに。

<スーパーマーケットにおせちのポスターが貼られていて『もうすぐお正月だなぁ』なんて思っていたんです。そこにお母さんと手をつないだ3歳くらいの女の子がやってきて、ポスターを見ながら、こんなことを言ったんです。『ママー、見て。タピオカが入ってるね!』と。そのお母さんも『え? どれどれ? あ、これのことー!?』と、驚き笑い。私も思わず気になって、その女の子の指差すものを見たら……黒豆をタピオカと勘違いしていたんですね。『なんてかわいいのー!』って、ほっこりしました>

 これを、

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秀島史香

秀島史香

秀島史香(ひでしま・ふみか)ラジオDJ、ナレーター。1975年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。慶應義塾大学在学中にラジオDJデビュー。映画、テレビ、CM、美術館音声ガイドなど多岐にわたり活動している。現在FMヨコハマ『SHONAN by the Sea』、NHKラジオ『ニュースで学ぶ「現代英語」』、NHK Eテレ『高校講座 現代の国語』などに出演中。著書に『いい空気を一瞬でつくる 誰とでも会話がはずむ42の法則』『なぜか聴きたくなる人の話し方』(共に朝日新聞出版)。ハスキーで都会的な声質、あたたかい人柄とフリートークが、クリエイターからリスナーまで幅広く人気。

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ただ状況説明しただけでは、おもしろさが半減