大阪府の吉村洋文知事
大阪府の吉村洋文知事

 5月末での閉鎖がきまった、大阪府の新型コロナ感染者用の大規模医療・療養センター。予算は約84億円かかったが、のべ利用者数の約2050人で計算すると、利用率にして2・7%ほどだ。もしもに備えての準備かもしれないが、大きすぎた出費ではないだろうか。

【写真】閉鎖が決まった大阪府の大規模医療・療養センター

 同センターは、大阪市の国際展示場「インテックス大阪」に設置された療養施設で、無症状・軽症者用に800床、中等症用に200床の計1千床を備えており、その費用は約84億円。大阪府の吉村洋文知事の肝いりで整備された。

 とはいえ、今年1月末から運用が始まったが、新規感染者数が1日あたり1万人を超える日でも、患者は1人という日もあった。3月初旬には、新規感染者数が連日8千人ほどと高止まりが続いても、多い日で60人ほどの患者数だった。

 4月24日現在で同センターを利用した患者の総数は290人。この人数で単純に割ると、1床あたり約2900万円という破格の数字になる。

 当初、吉村知事は2月の記者会見で、岸田文雄首相に直談判し、同センターに国から医療従事者を派遣してもらう予定だった。しかし、利用者が少ないことから、派遣はいつしか立ち消えになったという。

大規模医療・療養センターを利用した府民によれば、

「とにかく寒い。それと人が少なく、がらーんとして活気がなく、国際展示場なので夜はどこからか明かりが漏れてきて、薄暗く不気味。中の様子をスマホで撮影したら『禁止ですから』ときつく言われた。あそこは治療や療養をする場じゃない。二度と行きたくない」とのこと。

大阪府のある幹部はこう打ち明ける。

「ホテルを使った宿泊療養でさえ利用率が30%にも届かないのに、天井の高い国際展示場をパーティションで仕切った臨時病室での療養でしょう。屋外の風が強い日には、夜になると『変な音がする』『幽霊じゃないのか』と、患者の間からうわさが出るほど惨憺(さんたん)たる状況でした。大規模医療・療養センターは、吉村知事のパフォーマンスの中でも大失敗した例として残るでしょう」

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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吉村知事「閉鎖は予定通り」