クロフネ(写真提供・日本中央競馬会 JRA)
クロフネ(写真提供・日本中央競馬会 JRA)

 前回は距離不問のオールラウンダーたちを紹介したが、今回は芝でもダートでもG1勝ちを収めた馬場不問の二刀流馬たちをピックアップしよう。

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 現在までに芝とダートの両方でG1(Jpn1を含む)を勝った日本の馬は全部で5頭。意外に少ないと感じるかもしれないが、これは日本ではフェブラリーステークスがG1に昇格となった1997年まではダートG1が存在しなかったから。そのため、これ以前に現Jpn1の東京大賞典を勝ったイナリワン(芝でも有馬記念などを勝利)や、Jpn1昇格直前の96年に川崎記念を制したホクトベガ(芝でエリザベス女王杯を優勝)などは前述の5頭には含まれない。

 ちなみにこの5頭のうち4頭は2000年頃に活躍したほぼ同世代の馬たち。史上初めて芝とダートの両方でG1馬となったのはアグネスデジタルだった。人気ゲーム「ウマ娘」にも登場しているこの馬こそが日本競馬史上もっとも馬場不問のオールラウンダーと言っても過言ではない。

 アグネスデジタルは3歳時(旧馬齢表記)から芝もダートもお構いなしに出走し、1999年にG2全日本3歳優駿(ダート1600m)で重賞初制覇。翌年の秋にはG3武蔵野ステークス(ダート1600m)2着からG1マイルチャンピンシップ(芝1600m)に挑戦して優勝した。

 しかしこれはアグネスデジタル伝説のまだまだ序の口。翌年は9月にG3日本テレビ盃(ダート1800m)圧勝からG1南部杯(ダート1600m)を連勝すると、その次走では芝の中距離に挑戦して天皇賞(秋)も制覇。この時に負かした相手が前年からこの年の春にかけて芝の中長距離路線を牛耳ってきたテイエムオペラオーとメイショウドトウだったのだから恐れ入るしかない。

 だがアグネスデジタルの無双はここからが本番。年末には香港へ遠征し、芝2000メートルの香港カップを制して海外G1勝利の快挙を達成。しかも翌年2月には再びダート路線に転じてフェブラリーステークスまで制してしまった。ダート(地方)→芝(中央)→芝(海外)→ダート(中央)でG1を4連勝。こんなローテーションで走る馬ですらまれなのに全て勝つのは空前絶後の偉業と言っていいだろう。

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アグネスデジタルに続いた馬は?