「こびナビ」「みんパピ! 」を設立、副代表でもある木下喬弘医師。”手を洗う救急医Taka”として一躍有名に(本人提供)
「こびナビ」「みんパピ! 」を設立、副代表でもある木下喬弘医師。”手を洗う救急医Taka”として一躍有名に(本人提供)

新型コロナウイルスワクチンやHPVワクチンについて、熱心に情報発信をするのが、"手を洗う救急医Taka"こと木下喬弘医師だ。救急医から公衆衛生学の専門家というユニークな経歴を持つ彼が、SNSなどを使い、声を届け続ける使命感とは。発売中の週刊朝日ムック『医者と医学部がわかる2022』で話を聞いた(内容は取材時のものです)。

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 木下喬弘医師がツイッターによる情報発信を本格的に始めたのは、2019年1月のこと。その後、20年に世間を混乱に陥れた新型コロナウイルスについて、わかりやすい感染対策をつぶやき続けたところ、みるみるうちに注目され、現在では約14万人のフォロワーを持つに至った。

「えたいが知れないウイルスへの恐怖心から、当時のSNSはパニックに近い状態。不安をあおるような間違った情報もあふれていました。医師が発信する確かな情報が求められていたのだと思います」

 21年には新型コロナウイルスワクチン関連の情報を発信するプロジェクト「こびナビ」を立ち上げ、医療従事者の仲間たちとともに、意欲的な活動を続けている。

 わずか数年で、SNS上での存在感を得た木下医師。

「ツイッターの魅力は、多くの人にタイミングよく発信できること。内容によっては閲覧数が数百万になることもあって、非常に強力なツールだと実感しています」と話し、「今では息をするようにツイートしています」と笑うが、始めたころはトライアンドエラーを繰り返したと振り返る。

「医師同士の意見交換ではなく一般の人に医療情報を届けるわけですから、正確さはもちろんのこと、わかりやすく興味を持たれるように書くことが大切です。最初のころはこれが難しくて『きちんと理解されていないな』と感じることも多々ありました。そこで、フォロワーが多い方のツイートを見て研究しました。今では文章の書き方が格段にうまくなったと思います」

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 ツイッターなどのSNSツールには、その発信力の大きさゆえのマイナス面もある。アンチコメントや誹謗中傷はつきもので、木下医師もこれまでに何度も炎上を経験した。

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