オンラインで和歌山県議会の委員会に参加したCNV代表のマリオ・ホー氏
オンラインで和歌山県議会の委員会に参加したCNV代表のマリオ・ホー氏

 また、当初、和歌山県のIR計画は、CNVのほかに、マカオを中心に事業展開する「サンシティ・グループ」が事業者候補となっていた。その選考は「IR誘致に関する有識者会議」が手掛けていた。昨年7月、その審査内容が明らかになり、CNVが656点、サンシティが720点だった。

 しかし、CNVの自然と共生した滞在・体験型IRというテーマや、ギャンブル依存症対策などが評価されたという経緯がある。

「評価の項目が13ありました。サンシティが10項目でCNVを上回っていました。私もサンシティの提案のほうがいいんじゃないかという感想を持っています。サンシティが新型コロナウイルスへの懸念で撤退したのは事実ですが、なぜ評価が低いほうを和歌山県が選んだのか。それに納得できる説明が県からはなかった」

 と山家県議は話す。

 そんな不信感が最後まで拭えず、特別委でも反対10、賛成5で否決。その流れは本会議でも変わらず、「和歌山IR」は幻となった。

 仁坂知事は、「和歌山県が少しずつ衰退しており、それを止めようと頑張ってきた。少しは止まっているが止まり切れていない。地域発展の起爆剤がIRだった。残念ながら次の成長因子を失った」と悔しそうに述べた。

 IRを推進する岸田政権、自民党。和歌山県は二階氏だけではなく、元経済産業相の世耕弘成参院幹事長、元沖縄北方担当相の鶴保庸介参院議員、元総務相の石田真敏衆院議員ら大物ぞろいだ。

「私には国会議員の先生らから、IR、カジノについては何もプレッシャーというのか、そういうものはありませんでした。他の県議のことはわかりませんが」

 と山家県議はいう。本会議で賛成した、自民党の別の県議は、「名前は出さないで」と言いながら、こう打ち明けた。

「賛成か反対かで正直、迷いました。和歌山県の国政の先生は大物ばかり。二階先生がカジノを推進していることは誰もが知っている。当然、顔がちらつきますよ。賛成せよと国会議員の先生から言われたりはしないけど、会合などで顔を合わせれば当然、賛成が当たり前という会話になりますよ。県議同士でも『造反なんてしないよな』とも言われますからね。なかなか辛いです」

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二階先生は看板政策の柱の一つを失った