ロッテ・佐々木朗希
ロッテ・佐々木朗希

 一人だけ違う次元で野球をしている。そんな錯覚を覚えた人も多かったのではないだろうか。28年ぶりの完全試合から1週間後に行われた4月17日の日本ハム戦、佐々木朗希はまたしても一人の走者を出さないまま8回を投げ抜いたのだ。味方の援護がなく、球数も102球を数えたということもあり、今後のことを考えての降板となったが、もし1点でもチームが得点を奪っていれば2試合連続の完全試合の可能性も極めて高かっただろう。

【写真】高校球児時代の初々しい佐々木朗希投手

『2試合連続の完全試合』と簡単に書いたが、それにあと1イニングまで迫るということも、今までの野球の常識からは考えられないことである。しかも末恐ろしいのは、この日の佐々木の状態が決して本調子には見えなかったことだ。13人連続三振を奪った前回の登板では150キロに迫っていたフォークのスピードが140キロ台中盤に落ち、立ち上がりは引っかかり、中盤からは少し浮くケースも目立っていた。

 また、8回には右打者の外角を狙ったボールがシュート回転して真ん中に入り、24人目の打者となった野村佑希にはあわやという当たりをライト線の右に飛ばされている。2試合連続の大記録を期待する大観衆の異様な雰囲気の中で投げることによる疲労は確実にあったはずだ。

 それでもこの日の最後に投げた102球目のストレートは163キロをマークしているように、終盤になってもスピードが全く落ちないというのは驚きである。前回のオリックス戦でも対戦した打者がストレートを狙っていても前に飛ばないと口を揃えていたが、リリーフ投手ではなく先発投手が分かっていても打てないストレートを1回から9回まで投げ続けるというのは前代未聞だろう。

 これで佐々木は今シーズン4試合の先発登板を終えたことになるが、改めて主要な数字を並べてみると以下のようになっている(WHIPは投球回あたりの被安打プラス与四球)。

4試合 2勝0敗 31回 被安打7 自責点4 与四死球3 56奪三振 防御率1.16 被安打率2.03 与四死球率0.87 奪三振率16.26 WHIP0.29

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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データで浮かびあがる佐々木の“異次元投球”