津田雄一さん(左)と、ピョートル・フェリクス・グジバチさん(右)
津田雄一さん(左)と、ピョートル・フェリクス・グジバチさん(右)

 3億キロメートル彼方の小惑星リュウグウから「星のかけら(サンプル)」を地球に持ち帰った「はやぶさ2プロジェクト」。幾多の想定外を乗り越え、9つもの「世界初」という偉業を成し遂げた背景には、どのようなチームマネジメントがあったのか? 『世界最高のチーム』と『世界最高のコーチ』の著者である経営コンサルタントのピョートル・フェリクス・グジバチさんが、『はやぶさ2のプロジェクトマネジャーはなぜ「無駄」を大切にしたのか?』の著者の津田雄一さんに聞きました。

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■「生産性の高いチーム」の特長

ピョートル:困難だけれども成功すれば大きなイノベーションにつながるチャレンジを“ムーンショット”といいますね。月にロケットを打ち上げたことから派生した言葉ですけれども、はやぶさ2は月よりも遠い天体まで行った壮大なプロジェクトでした。リーダーとして総勢600名ものチームを率いた津田さんは、たいへんな苦労だったと思います。

津田:はやぶさ2が目指したリュウグウという小惑星は、直径約1キロメートルの小さな天体で、地球から観測しても得られる情報はごくわずかでした。誰も行ったことのない天体ですから、何が起こるかわからない。実際に、行ってみたら不測の事態もたくさん起こりましたが、それらをすべて解決して、当初の予定を大きく上回る成果を挙げることができたのはチームワークの勝利だと思っています。

 リュウグウでのミッションを終えて地球に戻るときに、チームメンバーの一人が私に「はやぶさ2は、みんなが『自分がいなければ成功しなかった』と思えるプロジェクトだ」という言葉をかけてくれました。それはまさに私がつくろうとしたチームの姿で、奇しくもそれをメンバーの口から聞いたときには、本当に泣きたくなるくらいうれしかったです。

ピョートル:「自分がいなければ成功しなかった」というのは、メンバーが「チームの仕事に『Meaning(意味)』を見出していた」からこそ出てくる言葉ですね。

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