村田諒太(左)にTKO勝ちしたゴロフキン
村田諒太(左)にTKO勝ちしたゴロフキン

 プロボクシングWBA、IBF世界ミドル級王座統一戦(9日、さいたまスーパーアリーナ)でWBAスーパー王者の村田諒太(36)=帝拳=はIBF王者のゲンナジー・ゴロフキン(40)=カザフスタン=に9回TKOで敗れた。2013年にゴロフキンと闘った元WBA世界スーパーウエルター級暫定王者の石田順裕(のぶひろ)氏(46)は、この一戦をどう見たか。

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 石田氏は2013年3月、WBA世界ミドル級王座をかけてゴロフキンと対戦。3回に左アッパーで上体を起こされたところに強烈な右を食らい、ロープ外に上体が吹き飛ばされ壮絶な失神KO負けを食らった。

「石で殴られているようだった」

 圧倒的な実力差……石田氏はゴロフキンの異質な強さを肌で知る、数少ない日本人の一人だ。

 ゴロフキン優位と見られていた一戦。石田氏は、村田が勝つためには「前に出てゴロフキンを下がらせる」「ボディーへの攻撃」が重要と見ていた。

 アマチュア時代を含めダウン経験が一度もないとされ、タフさも際立つゴロフキンだが、ボディーが唯一の弱点ではないかとの指摘は出ていた。

「村田選手の出足は良かったです」 と石田氏。1回から先に手を出してゴロフキンを下がらせ左ボディー、右ボディーを打ち込んだ。

「ボディーはゴロフキンが嫌がっているのが分かりました」(石田氏)

 ただ、5回からはゴロフキンが戦い方を変えてきた。

「動いて、距離感を変えてきました。ガードの隙間からパンチを入れる。パンチの角度を変えて打ち込む。このあたりはさすがの技術です。パンチ力だけではなく、こうした冷静さを併せ持つのがゴロフキンの強さ。ビッグマッチを数多く経験しているゴロフキンの経験値が勝ったということだと思います」(同)

 敗れた村田も試合後、「強かったというよりうまかった。総合力で彼が上だった」と、想像以上の技術力の高さだったことを認めている。

 激しい打ち合いの末、プロ19戦目で初となるダウンを奪われてのTKO負け。「レジェンド」の壁はやはり厚かったが、石田氏は村田をたたえる。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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村田は「キャリアを重ねればまだまだ強くなる」