個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。今回は、あの部屋について。
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「偉業を今も続ける日本随一の長寿番組の収録にお邪魔した」
そのようにツイッターに書きましたところ、ほとんどの方々が「あの部屋ですね」的なコメントで、改めて「あの部屋」の偉大さを痛感しております。
中には「笑点」や「新婚さんいらっしゃい」を思い浮かべた方々もいらっしゃったようですが、どちらも日本が誇るべき素晴らしい長寿番組だし、どちらも僕が子供の頃から大好きな番組ではありますが、我が夫婦は結婚19年目でさすがに新婚とは言いがたく、またあの番組に出る新婚さんのような微笑ましくオモロな夫婦ではありませんし、山田くんに持ってかれる座布団にも座っていませんので、どちらもわたくしの出演はございません。
情報も解禁になりましたゆえ。
はい。今度「徹子の部屋」に出演いたします。
お袋。俺、「徹子の部屋」に出るよ。
「あんた、だぁれも知らん大東京に独りで出てって、まぁ、よく頑張ってきたなぁ」と数年前に電話で言ってくれたお袋よ。俺、「徹子の部屋」に出るんだよ。いたよ。徹子。黒柳徹子さん、ホントに実在したよ。
徹子さん、ネッシーのように言ってすみません。
でもホント、それくらいの存在なんです。「憧れ」とか「雲の上」といった表現では生ぬるい。なんというか、徳川家康や聖徳太子がホントに実在したんだと思うレベル。「偉人」レベル。「巨星」レベル。それはもう一方的に「拝見する」対象で、少なくとも「会う」や「話す」ことなど、一生ないと思っておりました。
収録日。緊張で何も話せないのではないか。それもいいか。黒柳徹子さんという偉人を前に何も話せなくたっていいじゃないか。とにかく、徹子さんと同じ空気を吸い、一方的に拝見する存在だったこの方と、間近で一言二言、会話ができればそれで十分じゃないか。一言二言の会話で番組が成立するかは分からないが、てか恐らく成立しないが、もはや番組が成立しなくたっていいじゃないか(←いくない)。そんなことを思いめぐらせながら、いざセットへ。