星友啓さん
星友啓さん

 先進国の中でも自己肯定感が極端に低いといわれる日本人。どうやって自己肯定感は高めていけるのでしょうか。オンラインスクールでありながら全米トップ校として知られる「スタンフォード大学オンラインハイスクール」校長の星友啓さんが新刊『全米トップ校が教える自己肯定感の育て方』(朝日新書)ので紹介した最新科学によるメソッドを特別に公開します。

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「自己肯定感を高めるためには、ネガティブな気持ちを取り除きたい!」

 そう思う人も多いかもしれません。

 しかし、人間は、もともとポジティブなことより、ネガティブなことを強く感じるような脳のクセがあります。これは、「ネガティビティー・バイアス」といいます。

 人類が進化の過程で獲得した、失敗を繰り返さないための大事な能力です。

 さらに、私たちの住む現代の社会は、自分にきつく当たる心の働きをさらに増幅するような風潮になっています。

「自分に甘くてはいけない」「成長するためには、自分に厳しくすべき」などと、日々の競争の中で周りから一歩前に抜け出るために、日々の生活から自分を批判的に反省することを幼い頃から奨励されていく。

「自分に甘くするのは心の弱さの表れだ」とか、「自分に優しくすると自己満足や自分勝手につながる」など、自分を労わる心の働きに対して、厳しい目線が向けられるのもしばしばです。

「自分に厳しくするべきだ」という視点は、自分をより良い方向に進めるためのモチベーションを鼓舞するのに、一定の効果をもたらすかもしれません。

 しかし、自分に厳しくしすぎてばかりいると、うつや不安症のリスクが上がったり、逆にモチベーションが下がってしまうことにつながってしまいます。

 実際、自己批判が私たちの心の安定を揺らがせることはこれまでの心理学でも分厚くエビデンスが積み重ねられています。

 やはり何事もバランス。度がすぎてしまってはいけません。

 私たちが既に脳に組み込まれている「ネガティビティー・バイアス」が行きすぎないように意識して心のバランスを保つことが必要です。

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鍵となる「セルフ・コンパッション」とは?