実社会では、論破のメリットは少ない? ※写真はイメージ (c)GettyImages
実社会では、論破のメリットは少ない? ※写真はイメージ (c)GettyImages

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 近頃、「論破」という言葉をよく耳にするようになりました。その言葉を聞いて、最初に頭に浮かぶのは、2ちゃんねるの創始者である西村博之(ひろゆき)さんです。「論破王」というような呼ばれ方をされ、今や、テレビやネットで大活躍されています。

 私も、さまざまな人と議論をかわしているところをYouTubeで拝見しましたが、「そういう方向からの見方があるのか」と感心したり、「それはへりくつのような……」と思うこともあったりで、「この意見には、どんな返しをするのかな?」と、聞いていてワクワクしました。「なるほど」と思わされる返答を次々に繰り出し、相手の意見をバッサリと切っているところは、非常に面白かったです。 

 しかしそれはあくまで、ネットやテレビでのエンターテインメントとしての話。

■実社会では、論破のメリットは少ない

 私は普段から、「論破したところで何もよい結果は生まれない」と思っています。むしろ、「議論に負けたほうが、勝者になりえるのではないか」とさえ考えています。

 たとえば、午後1時に、Aさんたちと自分たちのグループの打ち合わせがあったとします。それが30分早まることになったので、その旨をAさんのグループに伝えました。しかしAさんのグループは時間になってもやってくることがなく、自分たちのグループは結局30分間待たされたとします。なにもすることがなく、ただずっと待たされたとき 、普通だったら、「打ち合わせが早くなると伝えたはずだけど」とAさんのグループを怒りたくなるでしょう。しかし場合によっては、Aさんのグループは、「そんなことは全く聞いていない」となり、言い争いになることがあるはずです。

 打ち合わせが30分早まることを伝えたメールなどが残っていれば確認できるかもしれませんが、もし口頭で伝えていた場合は証明する術はありません。たとえ書いたメールやメモが残っていたとしても、分かりにくく、きちんと伝わらなかったケースもあります。とにかく、時間に関して「言った」「言わない」の口論になり、せっかく打ち合わせのためにつくった時間までもが、無駄に使われてしまいます。

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杉山奈津子

杉山奈津子

杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』『「うつ」と上手につきあう本 少しずつ、ゆっくりと元気になるヒント』など。ツイッターのアカウントは@suginat

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