マツコ・デラックス(左)と矢部浩之
マツコ・デラックス(左)と矢部浩之

 マツコ・デラックスとナインティナインの矢部浩之がMCを務める『アウト×デラックス』(フジテレビ)の最終回が3月17日に放送された。2013年にレギュラー化されたこの番組が、約9年の歴史に幕を下ろした。

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 レギュラー化される前の特番の頃から、この番組には明確なコンセプトがあった。それは、常識外れの「アウト」な部分を持っている人々をスタジオに招いて、トークを展開していくということだ。

 この番組が画期的だったのは、ゲストを選び出すのに「アウト」という全く新しい基準を作ったことだ。一風変わった趣味を持っている、性格にひと癖ある、他人とコミュニケーションが上手くとれないなど、さまざまな意味で個性の強いゲストたちを「アウト」という言葉でひとくくりにして紹介していた。芸能人と一般人の区別すらしていなかった。

 だからこそ、今までほかの番組にも出ていなかったような幅広いタイプのゲストが次々に登場するようになった。ゲストが現れるときには「ゲームをやりすぎて腱鞘炎になった大女優」「自分が作った紙芝居を世に広めたい女」など、その人に付けられた印象的なキャッチコピーが最初に紹介される。

 そして、そのテーマで話を聞いているうちに、彼らの特徴的な部分が引き出される一方で、それ以外の人間としての魅力もどんどんあふれ出してくる。

 一見すると変わり者で近寄りがたいと思われてしまいがちな「アウト」な人たちが、意外なほどかわいらしい一面を覗かせたりする。そこがたまらなく面白かった。

 この番組の根幹を支えていたのは、司会のマツコと矢部のアウトな人々に対する温かいまなざしだ。彼らは決してゲストの話を邪魔したり、批判したりはしない。彼らのしゃべることに真摯に耳を傾けて、その個性を自然な形で引き出していく。

 そもそも、マツコ自身がインパクトのある見た目を持つ女装タレントであり、自分はアウトな人間であるという意識を持っている。彼女は自分もそちら側にいると思っているからこそ、番組に出てくるアウトな人を決して突き放したりしなかった。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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