植朗子
【※ネタバレ注意】以下の内容には、今後放映予定のアニメ、既刊のコミックスのネタバレが含まれます。
『鬼滅の刃』のアニメ3期、刀鍛冶の里編の制作が発表されて以降、登場予定のキャラクターに注目が集まっている。無限列車編での煉獄の死闘、遊郭編での宇髄の引退など、上弦の鬼の参戦によって、鬼殺隊の戦いはより激しさを増していく。そんな中、新シリーズの刀鍛冶の里では、柱2人が上弦2体とそれぞれ熾烈な戦いを繰り広げる。その戦闘で重要な役割を果たすのが主人公・竈門炭治郎と不死川玄弥だ。鬼狩りとしての才能に恵まれていないはずの玄弥が、このシリーズにおいて戦い方を確立していく様子は、見どころのひとつだ。ここでは玄弥が優秀な兄との確執をへて、どう才能を開花させていったのかを考察する。
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■不死川玄弥の決定的な欠点
不死川玄弥（しなずがわ・げんや）は、鬼殺隊の主要戦力である「柱」のひとり、風柱・不死川実弥（しなずがわ・さねみ）の実弟である。実弥は鬼殺隊の中でも屈指の実力者であり、「風の呼吸」からくり出される絶技、身軽で敏捷な動きなど、柱の中でも突出した戦闘センスを持つ。しかし、この「偉大な兄」を持つ弟は、鬼殺隊の隊士に必要とされる、鬼殺しの武具・日輪刀の「色」を変化させる才がなかった。
＜刀だよ刀！！ 今すぐ刀をよこせ！！ 鬼殺隊の刀！！ “色変わりの刀”！！＞（不死川玄弥／2巻・第8話「兄ちゃん」）
玄弥は鬼殺隊入隊試験である最終選別の直後に、鬼殺隊の長・産屋敷耀哉（うぶやしき・かがや）の子どもを殴りつけてまで日輪刀を欲したが、彼のものになった日輪刀は結局、色を変えることはなく、それに関連する技である「呼吸」を操ることもできなかった。この日輪刀の一件をもって、玄弥は自らの鬼狩りとしての才能の無さと、「兄との差」を目の前に突きつけられることになる。
■焦りによって開花した才能
玄弥は「呼吸」が使えないだけでなく、体格も兄ほど恵まれていなかった。最終選別時の玄弥の身長は同期の炭治郎とほぼ同じだが、力は炭治郎の方が強く、体つきには幼さが残っていた。しかし、那田蜘蛛山での戦闘直後、炭治郎は蟲柱・胡蝶しのぶの邸宅で、急激に成長した玄弥と再会している。
＜短期間ですごく体格に恵まれている…＞（竈門炭治郎／7巻・第53話「君は」）
植朗子
伝承文学研究者。神戸大学国際文化学研究推進インスティテュート学術研究員。1977年和歌山県生まれ。神戸大学大学院国際文化学研究科博士課程修了。博士（学術）。著書に『鬼滅夜話』（扶桑社）、『キャラクターたちの運命論』（平凡社新書）、共著に『はじまりが見える世界の神話』（創元社）など。
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