2021年に育成ドラフト8位指名で巨人に入団した富田龍
2021年に育成ドラフト8位指名で巨人に入団した富田龍

 現在のプロ野球界で年々存在感を増しているのが育成ドラフト出身の選手たちだ。侍ジャパンの主力へと成長した千賀滉大、甲斐拓也(ともにソフトバンク)のバッテリーを筆頭に、昨年は和田康士朗(ロッテ)が盗塁王を獲得し、松原聖弥(巨人)がレギュラーとなるなどチームで欠かせない存在となっている選手は少なくない。2020年には初めて全12球団が育成ドラフトに参加。昨年は中日のみが参加を見送ったものの、過去2年間で合計100人もの選手が育成ドラフトで指名されているのだ。そこで今回はこの中から、次代の主力として期待できそうな選手を何人かピックアップして紹介したいと思う。

【写真】巨人で“太く短く”活躍した投手と言えばこちら!

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 最も多くの育成選手を抱える巨人では戸田懐生と喜多隆介の2人が既に支配下登録を勝ち取っているが、今年入団した選手では富田龍が面白い。実際に投球を見たのは2020年秋のリーグ戦だ。お目当ては1学年先輩の水上由伸(西武)だったが、その後を受けてマウンドに上がると、ストレートの最速は147キロをマークし、相手打線を圧倒するピッチングを披露して見せたのだ。

 ただ速いだけでなくフォームの躍動感も申し分なく、肘の使い方が柔らかいのも大きな長所である。大学4年間ではリーグ戦通算1勝しかマークすることができなったとのことだが、この日のピッチングからはとても信じられなかった。また逆に地方の中の地方とも言えるリーグでこれだけの実績しか残していないにもかかわらず、指名されているというところに潜在能力の高さがよく表れているとも言える。プロ入り後もここまで二軍の練習試合、教育リーグでも好投し、既に140キロ台中盤のスピードをマークするなど順調にアピールを続けている。昨年は先輩の水上がいきなり支配下登録されて一軍戦力となったが、富田もそれに続く可能性を十分に秘めた投手と言えるだろう。

 過去2年間で巨人と並んで最多となる合計22人の選手を育成ドラフトで指名したソフトバンクでは佐藤宏樹にかかる期待が大きい。富田と同じ本格派サウスポーだが、慶応大では1年秋に防御率1位に輝くなど、東京六大学でも注目を集めていた投手だ。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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高卒の育成選手で面白い存在は?