小学生のうちに家で勉強する習慣をつければ、受験が楽になる? ※写真はイメージ (c)GettyImages
小学生のうちに家で勉強する習慣をつければ、受験が楽になる? ※写真はイメージ (c)GettyImages

 うつ病を克服し、偏差値29から東大に合格した杉山奈津子さんも、今や小学生の男の子の母。日々子育てに奮闘する中でとり入れている心理テクニックや教育方法をお届けします。杉山さん自身が心理カウンセラーとして学んできた学術的根拠も交えつつ語る『東大ママのラク&サボでも「できる子」になる育児法』も絶賛発売中です。ぜひご覧ください。

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 以前、宿題は必要か不要かで、大きな論争が起きたことがありました。デューク大学のハリス・クーパー教授の論文にある、「小学生から中学生の時期は、勉強面で宿題はあまり意味がなく、効果をもってくるのは中学生や高校生になってからだった」という内容がYouTubeで紹介されたのがきっかけでした。

 クーパー教授の論文は、最終的には「宿題をやるべきかやらざるべきか、どちらがよいのかは不明」とまとめつつも、「小学生に多量の宿題を出しすぎるのは悪影響になる」ということを書いていたようですが、そこから、「宿題を出すのはやめたほうがいい」という意見が出され、議論になったのです。

 私としては、成績アップのために宿題は必要かどうかを問われるならば、「そこまで意味がない」という意見に賛成していました。もし点数を上げたいなら、みんな一律に同じ内容の宿題に時間を使うより、各自が苦手な教科に特化して勉強したほうがずっと効率的でしょう。

 ただ、勉強面に限らないで、「子どもを伸ばすためのアイテム」としてみるならば、宿題はあったほうが便利だと思うようになりました。ハリス・クーパー教授の論文の焦点は、「賢くなるかどうか」というものでした。そこではなく、「家で嫌なことを我慢する」だとか、「家で勉強するための場所や習慣をつくる」といったツールになりえるという点が、宿題のポイントなのだと思います。

 子どもにとって、毎日「自分の意思で」「我慢して何かをする」という機会は、存外少ないです。大人になってからは、 仕事が終わったらジムへ行く、 家に帰ったら実用書を読むなど、自らルーティンを作れる人は多いでしょう。一方、子どもは大人よりも、自分のやりたいことに忠実です。友人と遊んだり、ゲームをしたり、自分の欲求のために時間を使ったほうが、楽しいに決まっています。小学低学年のうちから、将来の進学先を考え、机に向かって勉強する時間を設けようと思う子なんて、ほとんどいません。

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杉山奈津子

杉山奈津子

杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』『「うつ」と上手につきあう本 少しずつ、ゆっくりと元気になるヒント』など。ツイッターのアカウントは@suginat

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